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第698話
誤解が解けて、ほっとする。
ソファーに座り、隣にいる泰介と肩同士が触れ合って、そのままテレビを眺める。
時間が経つにつれて、泰介が俺にもたれ掛かり、そのうち船を漕ぎ出した。
「泰介、眠い?ちょっと寝る?」
「······うん」
横になれるようにソファーから降りようとすると「違う」と言って俺を止める。
「膝枕がいい······」
体を横にして俺の膝に頭を乗せる。
そっと髪を梳いていると、そのうち眠ってしまった。
眠っている顔を見ながら考えるのはもう少しで訪れる卒業のこと。
近くに家を借りて、そこで一緒に暮らすのが1番いいけれど······。そういえば、偉成達はどうするんだろう。
ぶるっと寒気がした。
まだまだ寒い季節なのに、こんなところで何も掛けずに眠っていたら風邪をひいてしまう。
そう思って泰介をそっと抱き上げる。
「ん······何······?」
「風邪ひくからベッドに行くよ」
されるがままになる泰介。
ベッドに運んで布団を掛け、額にかかる髪を退けてやる。
「······はぁ」
寝顔を見ていると癒されて、自然と深く息を吐いていた。
隣に寝転び、俺よりも小さな体を抱きしめる。
少しだけ触りたい。
そう思ったけれど我慢。気持ちよく寝ているのに邪魔するのはいけない。
ああ、好きだな。
この柔らかい寝顔をずっと見ていたい。
「んぅ······誉君······」
「ん?」
薄く目を開けて、俺を探している。
抱きしめたまま返事をすれば、安心したようにまた目を閉じた。
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