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第709話

*** 発情期が終わり、風呂に入ってリビングに出る。 お互いに睡眠不足で、ソファーでうつらうつらとしてしまった。 時刻は昼の3時。 明日は学校があるけれど、俺が登校するのはそれが最後。 3年生はもう習うことがないし、俺は補習も何も無いからそれ以上学校に行く理由がない。 「千紘」 「んー?」 半分目を閉じながら俺にもたれ掛かりぼんやりする千紘に、イタズラをするようにちゅっと唇を啄む。何度も繰り返しているとくすくす笑いだして、俺の胸をとんとんと叩いた。 「なぁに?話があるんじゃないの?」 「······俺は明日が最終登校日だから」 「えっ!?」 ぼんやりしていた千紘が突然背筋を伸ばす。 驚いている間に俺の肩を掴んだ。 「え、嘘でしょ!?もうそんな時期!?」 「ああ。発情期だったからな、時間の感覚がちょっとズレてるのかもな。」 「違う!そういうことじゃない!······ああ、ごめんね、俺が発情期なんて起こしたから、高校生活全然楽しめてないよね······最後の思い出が······」 「いや、楽しかったけどな。それに千紘は悪くないから、そんなに落ち込まないでくれ。」 千紘から悲しみの匂いがして、項垂れる背中を撫でるとちらっと顔を上げた。 「俺ね、あのね、それだけじゃないの。まだ離れないってわかってるんだけど、すごく······すごくすごく寂しい。もうちょっとで偉成がいなくなる······。」 「でも明日が終われば卒業までずっとここにいるよ。卒業しても一緒に暮らすんだ。毎日行ってらっしゃい、おかえりって言える。」 眉尻を下げたまま、少しだけ口角を上げた千紘。 顔を寄せ、唇同士を触れさせる。 「確かに卒業って聞けば寂しいかもしれないけど、ずっと一緒だ。」 「······うん」 「愛してるよ」 「俺も」 漸く悲しみの匂いが薄れる。 それに安心して、千紘の手を取り指を絡めた。

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