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第715話
偉成のご両親に報告した。すごく喜んでくれたみたい。嬉しそうな匂いがする。
「お祝いにケーキ買いに行こ!」
「ああ」
服を着替えて2人で部屋を出る。
その時にハッと思い出して、偉成の腕を掴んだ。
「ご両親には合格のこと言ったけど、匡には?」
「匡?まだだけど······。言った方がいいのか?」
「やっぱりお兄ちゃんのことは気になると思うよ。」
偉成は少し考えてから、匡の部屋をノックする。
少しすると匡が出てきて、不思議そうに首を傾げた。
「何かあった?」
「受験してた私立大学、受かった。」
「え······そ、そっか。おめでとう」
匡は優生君を呼んで、偉成のことを報告している。
「おめでとうございます!」
「ありがとう」
2人におめでとうと言われて照れてる偉成は、「それだけなんだ」と言って俺の手を握る。
「じゃあ······」
「ああ。報告しに来てくれてありがとう」
どうやら人から祝われたりするのは照れ臭くて苦手みたいだ。そそくさと部屋を離れて寮の外に出た。
「ケーキ、何食べる?」
「なんでも。千紘の好きなのでいいよ」
「偉成のお祝いなのに?」
近くのケーキ屋さんに行き、美味しそうなホールのチーズケーキがあってそれを指さした。
「美味しそう!」
「じゃあそれにしようか」
「いいの?偉成はどれがいい?」
「それでいいよ」
俺のお祝いでも誕生日でもないのに。
結局そのケーキを買って帰り、ご飯を食べた後にロウソクで雰囲気を味わってから切り分けて食べた。
思っていた通りに美味しい。
「美味しいね!」
「ああ。美味しいな」
これで偉成は1つ肩の荷が降りて、暫くはぼんやりと過ごせる。
······いやいや、まだ国立大学の試験がある!
今度はそっちに集中出来るように、俺も何か手伝わないと。
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