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第717話

寮に帰ると寝室に連れ込まれた。 いつも通りこの熱から解放してくれると思ったのに、偉成は俺を寝室に入れると出て行ってしまった。 「え、い、いっせいぃ······っ」 「出てくるな!」 ドアに縋り付くと偉成の怒っている匂いが濃く香ってきて、涙がぶわっと溢れ出る。 「ごめん、ごめんなさい、俺が他の、他の人とキス、しちゃったからっ······でも、あれは違うのっ」 一生懸命伝えるけど、偉成は何も言ってくれない。 ドアを開けようとしたけれど、強い力で引かれていて無理だった。 「偉成ぇ」 「他の奴の匂いで発情してる千紘を抱く気は無い。」 「う、ぇ······っ」 「大人しくしてろ。終わるまで出てくるな」 突き放されてしまった。それがすごく悲しい。 その場に蹲って、体の熱をなんとか下げようと深呼吸を繰り返した。 *** いつの間にかその場で眠ってしまっていたみたいで、目を覚ますと床に蹲ったままだった。 体を起こすと熱は下がっていたようで、随分と楽になっている。 汗や涙、それに発情したせいで後孔から零れた愛液でぐちゃぐちゃになっている体を洗いたくて、着替えを持って部屋を出るとそこに偉成は居なくて、不安に思いながらもお風呂に入って汚れを落とした。 お風呂から出て、キッチンに行く。 ずっと何も飲んでなかったから喉がカラカラだ。 水を飲んで、ソファーに移動すると一気に悲しくなって、折角水分を取ったのに、また目から溢れさせる。 リビングのドアが開き、偉成がどこかから帰ってきた。着ていたダウンを脱いで、近付いてくる。 「······発情期は治まったのか」 「うん」 「······悪かった。冷静じゃなかった。体が辛いのに突き放して、本当にごめん。」 「······ううん。誰だって、他の人の匂いで発情されるのは、嫌だと思うから······」 偉成の手が頬を撫でて涙を拭ってくれる。 「ごめん。本当に······」 「大丈夫。それより、俺の方こそごめんなさい。」 謝ると、じっと偉成に見られて肩を竦める。 「······何で何も言わずに出て行ったんだ」 「ぁ······ちょっと、買い物と、気分転換に······」 「言ってくれたら一緒に行った。1人で行かないでくれって前にも伝えたはずだ。」 「でも、勉強してたから······」 偉成が怒っているのは、あの男性との事だけではないらしい。

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