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第721話
その日は抑制剤を飲み、何とか耐えてものの1時間で熱は治まった。
抑制剤が効くようになってきたのだろうか。偉成は兎に角治まって良かったと安心している。
翌日、匡と優生君と一緒に登校し、下駄箱で靴を履き替えようとしてそこを開けると、1枚の分厚めの封筒が入っていた。
昨日のこともあって気味が悪くて、固まっていたけれど、勇気を出してそれを手に取って開けた。
「ヒッ!」
中を見ると全部自分の写っている写真だった。
偉成と一緒にいる物や、匡や優生君と出かけた時のものもある。
思わず手から落として、写真は床に散らばった。
「千紘君?どうした、の······」
それを見た優生君がハッとした表情で匡を呼ぶ。
匡はそれを見て眉を寄せ、誰かに電話をしだした。
「千紘君、動けそう?」
「う、うん、大丈夫」
これって、もしかしてストーカーっていうやつなのだろうか。
いつの間に?誰が?──やっぱり昨日のあの人?
不安で体が震えだし、床に落ちる写真が目に入って呼吸が苦しくなりだした。
「千紘、大丈夫。大丈夫だから落ち着け」
「っ、ふ、ぅ······っ」
「優生、写真を千紘に見えないようにしてやってくれ」
匡に抱き上げられ、場所を移動する。
保健室に連れられて、ソファーに座らされた。
未だに落ち着かない呼吸。
苦しくて涙が溢れ出した。
そんな時偉成が焦った様子で走ってきて、俺を見るなり強く抱きしめてくれる。
縋るようにして偉成の腕を掴む。
段々と落ち着いてきて、偉成の胸に顔を埋めたまま深呼吸を繰り返す。
保健の先生が麻倉先生に連絡をして、少しすると先生がやって来た。
匡が状況を説明すると、偉成を連れて写真を持ってどこかに行ってしまう。
「偉成、どこ、いったの······?」
「先生と少し話をしに職員室に行ったよ。」
「······そっか」
体から力が抜けてソファーに倒れ込んだ。
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