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第727話
「千紘がストーカーにあえば君は警察に言おうとするだろ?でもオメガである千紘が差別の目を気にして嫌がるのは安易に想像できた。じゃあ次はどうするか······って考えた時に、君が出てくるだろうなぁって。」
「······俺が出てきて、それで、それから先の計画は?」
「君を俺の番にする。」
馬鹿らしい言葉に鼻で笑って返す。
近森の表情が漸く崩れる。
「俺が運命の番である千紘を裏切って、千紘を不安にさせたお前と番になると思うか?」
「······ならないと思う。でもね、こんな行動を起こすくらいに僕は本気なんだよ。」
手を振り払う。
もうここから去ってもいいだろうか。
これ以上話しても何にも成らない気がする。
「君がそうでなくても、千紘はどうだろうね。知ってるよ。今千紘がいる場所。俺の友達が向かってる。」
「は······?」
「千紘が、もう君に会う顔が無いって思ったら、俺の勝ちだ。」
慌てて傍に控えていた2人を見て「千紘の所に行ってください!」と叫ぶ。
2人は走り出して、千紘のいるホテルに向かう。
俺も向かおうとして、近森に腕を掴まれた。
目の前にいる男を強く睨みつける。
「千紘が君から離れたら、それでいい。」
「千紘に何をするつもりだ」
「さあ。傷ついてくれたらいいな。」
口元を歪ませる姿が腹立たしい。
「クソ野郎が」
初めて汚い言葉を吐き捨てた。
手を振り払い、店を出て遅れてホテルまで向かう。
何も起きるな。間に合ってくれ。
それだけが頭の中を埋めつくした。
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