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第728話
千紘が待っているホテルの一室に着く。
そこには警察の2人が数人の男を取り押さえている姿があった。
千紘はベッドのシーツに身を包み、放心状態だ。
「千紘っ」
慌てて千紘を抱きしめる。
この状況では間に合ったのかどうかもわからない。
俺と目が合うと、大きな目からはポロポロ涙が零れていく。
「千紘、ちょっとごめん。」
シーツを少し捲り、服を着ているかどうか確認する。
「······触られたり、殴られたりはしてないか?」
「頬、叩かれた······さ、さわ、られた、けど······撫でられた、くらい······」
下着しか着ていなくて、警察の仲間が来るのを確認してから場所を移動した。
別の部屋を借りて、怪我がないかを確認する。
「あの······偉成、き、気持ち悪いから、お風呂、入っていい?」
「ああ」
部屋にある風呂に千紘を入れて、着替えにバスローブを置いておいた。
その間に例の部屋に戻って警察と話をする。
近森のことも話をして、千紘を襲った男達は現行犯逮捕され、その場は収まった。
部屋に戻り、母さんに連絡をして協力をしてくれたことに礼を言い、その後は匡に連絡をして千紘の着替えを買ってきてくれるように頼む。
「無事なのか?」
「一応は」
匡には少しだけ今日のことを話していて、少し説明すると状況を理解してくれて、持ってきてくれることになった。
「偉成ぇ」
「どうした」
バスローブを着た千紘が、涙目で俺に近付いてくる。
抱き寄せると俺の首筋に顔を埋めて、そのまま静かに泣き出した。
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