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第729話

「怖かったよな。こうなる事を予測できなくてごめん。千紘を危険な目に遭わせるつもりはなかったんだ。」 「······ん、大丈夫······大丈夫。それより、偉成は······?」 「俺も大丈夫だから。」 千紘の体が細かく震えている。 きっと、俺が想像できないくらいに怖かったに違いない。 そのまま暫く待っているとドアベルが鳴り、怯えた様子の千紘を部屋の奥に居させて、ドアを開けた。 「匡」 「千紘は?」 「怖がって、奥にいる。」 「······何で千紘に警護を付けなかったんだ」 「場所は割れていないと思っていた。」 匡を中に入れて、千紘を呼ぶ。 「匡が服を持ってきてくれた。」 「······匡」 「持ってきたからこれに着替えて、落ち着いたら寮に戻っておいで。優生と待ってる」 匡は千紘にそう言って、すぐに帰って行った。 千紘は受け取った服に着替えて、それから深く息を吐く。 「服のお礼、言えなかった」 「寮に帰ってから伝えよう。」 千紘の頬にキスをして、またそっと抱きしめる。 甘えるように千紘の手が背中に回された。 「千紘、寮に帰ろうか。それともまだここにいる?実家に帰るのもいいし······」 「寮に、帰る」 そのまま千紘を抱き上げ、部屋を出る。 喧騒はとっくに止んでいて、ホテルを出てタクシーを拾い寮まで帰る。 その車内で近森と接触できたと警察から連絡があった。近森とその仲間は自分の犯した罪はこれから明らかになって、俺達には平穏な日常が戻ってくる。 寮に帰り、疲れている千紘を寝室に運ぶ。 少し休んで、と伝えて離れようとすると、手を取られてベッドに膝を着いた。 「触られたの、気持ち悪い。」 「······俺はどうすればいい?」 千紘に触れてもいいのかどうか分からなくて、そう聞くと首に腕が回される。 「触って」 泣き出しそうな千紘の頬に触れて、そっと唇を合わせた。

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