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第734話

卒業式まであと3日。 部屋の荷物が少なくなっていく。 偉成が卒業するとすぐに借りた部屋に移ることになっていて、荷物は全部そっちに移動させる予定。 「千紘」 「何?」 「千紘はまだしばらくここで暮らして、春休みになる頃に引っ越してきていいんだぞ。俺が卒業したあとも、まだ少しだけ登校日があるだろ?」 「うん。でももう荷物纏めてるし、一緒に行くよ。」 荷物を詰めていたダンボールから顔を上げる。 思っていたよりずっと近い距離に偉成の顔があって思わず息が詰まった。 「俺が千紘と同い年に産まれたらよかったな。」 「そう?俺は今のままでいいけど」 「だって、そうすれば少しでも寂しいと思わせることはないだろう?ずっと一緒に時間を過ごせる。」 「んー······でも俺怖がりだから、先に偉成が色々経験していくのを見てたいな。俺が挑戦する時は『偉成も同じ事をしてた』って思ったらなんでも出来ちゃうかも。」 卒業式を目前に控え、ナーバスになっているのかな。 今日は笑顔も少なくて、捨てられた子犬みたいな表情をすることが多い。 「······そうか?」 「うん。それにさ、ほら、先輩後輩っていうシチュエーションに萌えを感じるでしょ?」 「······確かに。」 噛み締めるようにそう言った偉成。 少しだけ口角が上がっている。 俺はあまりそういうシチュエーションに萌えを感じないけれど、偉成はきっと好きだろうなと思って言ってみれば案の定そうだったらしい。 「ちーひろ」 「なあに」 ダンボールを挟み、至近距離で名前を呼ばれて返事をする。 なんだかすごく甘い。俺の大好きな優しい匂いが鼻腔を掠める。 目が合い、どちらともなくキスをして、甘い時間を過ごした。

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