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第736話

「泰介?どうした、何かあった?」 「ほ、誉、くん······っ」 「うん、何?」 「卒業、やだぁ······!」 高梨先輩に抱きついて、更にワンワンと泣き出す。 先輩は目を数回パチパチとさせた後、渡君の頭を撫でて「あー······」と声を零す。 「もしかして、ずっと様子変だったのはそれか?」 「んっ」 「俺が卒業するのが寂しかった?」 「さみしい」 先輩は小さく息を吐いて、俺達3人に苦笑を見せる。 「泰介を連れてきてくれてありがとう。あとは大丈夫だから、お前らは先に行ってくれ。匡は特に、仕事があるだろ?」 「あー、まあ······はい。」 匡は素直に頷いて、講堂の方に足を向ける。 「何かあれば連絡するから、その時は悪いけど迎えに来てくれるか?」 「わかりました!」 返事をして、俺も匡の後ろについて講堂に向かう。 優生君は不安そうにチラチラと先輩と渡君を見ていたけれど、あの2人は大丈夫。 「高梨先輩ってあんなに優しい雰囲気だったっけ······?」 「渡君は運命の番だしあんなに可愛いから優しくなったんだと思うよ」 初めて会った時の高梨先輩はちょっと怖かった。 でも高梨先輩だけじゃなくて、元生徒会の3年生は皆変わったなと思う。 「おー、お前ら遅刻だぞ。」 講堂に行くと麻倉先生が俺達にニヤニヤ笑いながらそう言ってきた。 怒られるかなと不安に思っていると、頭をくしゃくしゃ撫でられる。 「寂しくて泣いたのか?」 「泣いてないです!」 「そうかそうか。早く自分の席につけよ」 結局怒られることなく、俺と優生君は席に着いて、匡は生徒会長としての仕事をしに壇上の近くで井上君と寒沢君と話をしに行った。 「千紘君もこれからも赤目先輩と一緒に暮らすんでしょ?やっぱり寮を出て行くんだよね······?」 「うん。渡君の気持ちもわかるんだよね。一緒に暮らすんだけど、なんだか寂しいんだ。」 「そっか。毎日遅刻してきちゃダメだからね!」 「あははっ、わかってるよ!」 わかってるけど、実際はどうなるかわからない。 偉成とイチャイチャして過ごした日には、最悪登校できないだろうし。 「あ、そろそろ始まるね。」 優生君の言葉で何故だか緊張しちゃって、「卒業生、入場」というアナウンスに鼻の奥がツンとした。

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