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第737話
入場する3年生の中で、偉成はもちろん、高梨先輩と高良先輩、それから東條先輩を見つけた。
皆頼りになる先輩。
困っていた時いつも助けてくれた。
そんな先輩達が今日でもういなくなってしまうなんて。
感傷に浸っている間に式はどんどんと進んでいき、卒業証書が校長先生から手渡され、刻々と近づいていく退場の時。
「──卒業生、退場」
そのアナウンスが聞こえ、会場内には拍手が響く。
退場するとき、偉成が俺を見て小さく笑ったから、我慢していた涙がポロッと零れた。
それを慌てて拭い、在校生は花道を作りに外に出る。
暫く待っていると、3年生がやって来て花道を通っていき、そのあとは各自自由に過ごしだす。
俺は我慢できずに偉成に飛びついて、「おめでとう」と「行かないで」を繰り返していた。
「卒業したからな、行かないでは無理だな。」
さっきの渡君みたいにわんわん泣いていると、ギューッと後ろから強い力で抱きしめられた。
振り返ればそこには久しぶりに会う高良先輩がいて、ニコニコ笑っている。
「千紘ちゃん!俺にも!」
「高良先輩ぃ!」
偉成から離れて高良先輩に抱きつく。
いつもなら偉成に怒られるけど、これが最後だから今日は許してくれるみたい。
「千紘ちゃんに会えなくなるなんて」
「会えますよ!だって旭陽先輩に会いに行くし、そしたら先輩は絶対一緒にいるでしょ?」
「確かに。俺は旭陽の隣にいるからね!」
「今日は旭陽先輩は?」
「それがそろそろ赤ちゃんが産まれそうで、だから家に居てって伝えたんだ。······あ、ちょっとごめんね。」
高良先輩がスマートフォンを出して耳に当てる。
どうやら電話みたい。旭陽先輩かなと思っていると「えぇっ!?」と大きな声を出して慌てだした。
電話を切り、俺達を振り返る。
「ごめん!旭陽が産気づいたみたいで!帰る!」
「え、あ、はい!気をつけて!」
高良先輩が慌ただしく走って行く。
その後ろ姿を眺めながら手を振った。
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