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第739話
「──千紘」
偉成に呼ばれ、顔を見ると柔らかく微笑んでいた。
顔が寄せられキスをして、すぐに離れる。
手を取られ周りが最後の別れを惜しんでいる中、俺達は校舎に入って、偉成の長く過ごした生徒会室に来た。
「初めて千紘と出会った時、すぐに運命だとわかって、許可を取ることなくここに連れ込んだ。」
「そうだったね。あの時の偉成の印象は凄く悪かった!」
「ああ。自分でもそう思う」
ソファーに座って向き合う。
もうこの部屋に偉成が来ることは無いんだな。
「偉成。これからも、よろしくね。」
「急にどうしたんだ」
「偉成の番になれて幸せだよ。ありがとう」
「お、俺の、俺の方こそありがとう」
偉成の顔が少し赤くなっているのが面白い。
「これからもずっと一緒にいるわけだけど、やっぱり学校にいる間は寂しいから、偉成の何かが欲しいな。」
「何か······?あ、第2ボタンとか?」
「それもいいけどー······あ、そういえば去年は高良先輩は旭陽先輩からネクタイ貰ってた!」
「じゃあネクタイにする?」
勢いよく頷けばシュルっとネクタイを外される。同じようにネクタイを解いた偉成がそっと俺の首にかけてくれた。
「ふふっ、嬉しい」
それを自分で締めて、どう?と首を傾げて見せる。
「うん。まあ、デザインは同じだから。」
「······もっとなんか······嘘でも似合ってるって言って欲しかったんだけど。」
「あ、ごめん。」
ふっと息を吐いて、偉成に抱きつく。
「大好きだよ。今までもこれからもずっと、ずーっと愛してる。」
「······俺も愛してる。」
力強く抱きしめられ、泣きそうになりながら体を離す。
──今日、偉成が白樺学園を卒業した。
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