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悠介と旭陽

二人が出かけてから、急いで部屋の掃除をした。 綺麗になった部屋のど真ん中で大の字になって寝転ぶ。 子供、子供……もう一人、夕陽がアルファじゃなかった時のために、予防として作るべきなんやろうか。 体を丸め、不安から逃れるように目を閉じる。 気付けばそのまま眠っていた。 「ヴッ!」 「ママぁ、おーきーてっ!」 いきなりお腹の上に乗られて汚い声が出た。 目を開けると、俺の顔を覗き込む夕陽。 悠介が慌てて夕陽を俺の上から降ろして、「大丈夫?」と聞いてくる。 「大丈夫。ごめん、寝てもうた。」 「気にしないで。いつもお疲れ様。」 今日の夜、夕陽が眠った後に子供の事を相談してみようかな。 一人で考えたって、育てんのは俺と悠介やし、そもそも悠介がおらんと子供はできやんし。 「悠介、今日夕陽が寝た後、話がある。」 「話?わかった。」 夕陽を抱っこした悠介が柔らかく笑うから、つられて笑っちゃう。 「夕陽ぃ、パパにちゅーして」 「だめだよぉ」 「えー?だめなの?何で?じゃあパパがちゅーしちゃお」 キャッキャと楽しんでる夕陽は、結局悠介にちゅーしてもらって嬉しそう。 俺だってされたい。じっと悠介を見ていたら気持ちが伝わったのか、床に膝をつけた悠介の顔が近づいてくる。 「旭陽もしたい?」 「……したい」 キスしようとして、顔を近づけると、唇にぶちゅっと押し付けられるふにふにの手。 「……夕陽」 「ママはパパとチューしちゃダメ!」 「なんであかんのん?」 「夕陽はね、パパと結婚するの」 夕陽の後ろで片手を目に当てて泣いた振りをする悠介。 微笑ましいけど、俺は許されへん。 「パパはママのやから。ママがパパと結婚したから。」 「だぁめ!」 「ダメもくそもないんですぅ」 言い合っていると悠介が俺と夕陽をギューッと抱きしめた。 「二人とも可愛いね。夕陽はパパと結婚したいの?うんうん、しようね。旭陽は?嫉妬してるんだね。誰よりも可愛い二人に愛されるなんて最高……でも口悪いよ旭陽。」 最後にちょっと怒られて、唇を尖らせる。

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