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悠介と旭陽
「あのね、あの……ママはね、夕陽がね、守ってあげるよ」
「……」
「ママ、痛くないよ。」
「っ、ごめんね」
こんなに優しい子に育っている。
まだまだ産まれて片手で数えられる歳やのに。
「……ねえ旭陽、夕陽はアルファかもしれないよ。」
「……なんなん。気休めの言葉はいらん」
「違う。本当にそうかもしれない。」
夕陽を腕に抱いて、温かさにほっとする。
そのまま眠った夕陽の額にキスをして、柔らかい髪を撫でた。
「アルファは本能でオメガを守ろうとするんだ。……わかるだろ?旭陽を守ろうとしてるよ、この子は。」
「……親子やからそう思うんやろ」
「違うよ。そもそもこの子は言葉を話すのも早かった。今じゃ普通にコミュニケーションもしっかりと取れる。ベータやオメガじゃこんなに早くない。」
「……ほんまに、アルファなん。」
夕陽の手にぎゅっと握られてる俺の服。
こんなに小さい存在が、俺を守ろうとしてくれている。
「……明日夕陽に、妹か弟が欲しいか聞いてみる。」
「うん。」
「いらんって言われたら……いや、ううん。いらんって言われても子供は欲しい。俺は一人っ子で正直ちょっと寂しく思ってたから。」
「俺も。兄弟がいればなぁって思ってた。」
「……さっきは怒鳴ってごめん。」
「ううん。旭陽の不安な気持ちもわかるから、謝らないで。」
強く抱きしめられ、深く悠介の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
「俺達はずっと一緒だ。大丈夫だよ。愛してる」
「……俺も、愛してるよ。」
悠介の言葉に漸く安心できた。
今日は三人でベッドに寝転がり、悠介と一緒に夕陽を挟んで眠った。
翌朝、夕陽に聞いてみた。
「夕陽は妹か弟、欲しい?」
「夕陽、お姉ちゃん、なるの?」
「うん。お姉ちゃん、なりたい?」
小さな手を掴んで聞くと、夕陽は花が咲いたような可愛い笑顔を見せてくれる。
「なりたい!お姉ちゃんなる!」
夕陽の笑顔につられて、俺も悠介もふふっと笑う。
ぎゅっと抱きしめると嬉しそうにキャッキャとはしゃぐ夕陽に心の底から癒された。
「さーて、旭陽さん。今日から夜は眠れないね!」
「……子育ての忙しさ舐めるなよ。眠れないなんて許さへん、殺す気か。」
悠介を睨みつける。
焦ったように視線をキョロキョロ動かす悠介。
「ちゃんと旭陽が眠れる程度に頑張る……」
小さく呟く姿に、ふふっと笑えた。
悠介と旭陽 了
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