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東條彰仁

両親との話を終えて俺の部屋に案内すると、優一さんは疲れた様子でソファーに座った。 「あんな感じで大丈夫だった?」 「はい。ありがとうございます。」 優一さんはへにゃっと破顔させる。 その表情に胸が高鳴った。 年上のくせに、何でそんな顔をみせるんだ。 「あの……優一さん」 「優一でいいよ。それより、この部屋広すぎない?彰仁君の一人部屋なんだよね?」 「はい。」 「俺の一人暮らしの家よりも大きいなんて……」 部屋を見渡して、そのまま項垂れる。 きっと大分疲れたんだろうな。 「ちょっと休みますか?」 「……彰仁君」 「はい」 優一さんの隣に座る。 俺に甘えるように肩にもたれてきた彼は、どうしても年下に見える。 「無理かもしれない」 「はい?」 「こんな立派なお家の息子さんと恋人なんて……恐れ多いよ。俺にはやっぱり無理かもしれない」 弱気になっているところ悪いけれど、正直俺は優一さんといることが気楽で好きだ。 だからこんなことはきっと他の誰にも頼まないと思う。 「無理じゃないです。」 「……無理だよぉ」 「じゃあこうしましょう。最後まで付き合ってくれたら、優一さんの今抱えている借金は俺が全て返済します。」 「え……」 「だから、付き合ってください。」 ずるいかもしれないけれど、始めたばかりで辞められるのは困る。 何故か顔を真っ赤に染めている優一さんは、ぐっと何かを堪えた後に一度頷いた。 「……はい。よろしくお願いします」 そうして、俺と優一さんの偽装恋愛が始まった。 東條彰仁 了

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