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栗原優一

会社から彰仁君の家に戻ってきてすぐ、アルバイト先のバーに就職が決まったから辞めると連絡を入れた。 「優一さん。信濃さんの事なんだけど、あの人も性別はオメガだから、何か困った事があれば彼に聞いてください。」 「そう、なんだ?わかったよ」 「彼に言い難いことがあれば俺に。まあ、彼に言う前に俺に言ってもらう方が俺としては有難いんですけど、やっぱり同性の方が話しやすいだろうし……」 「……彰仁君」 「はい」 こんなに優しくされると困ってしまう。 本当の恋人じゃないって、彼は言っていた。 嘘だとしてもって言っていた。 それなのに。 「俺達は本当に付き合っているわけじゃないのに、どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう。確かに君は結婚を迫られなくて済むっていう得があるかもしれないけど、俺の代わりに借金を払ったり、俺を働かせてくれたり……それは君の損になると思う。」 「借金に関してはそういう条件ですし、貴方がうちの会社で働いてくれると言ってくれたのでそうしただけです。おかしなことは無い。」 「……そうかも、しれないけど……そんなに優しくされると、勘違いしてしまいそうだよ。」 彰仁君はもしかして本当に俺の事を大切に思ってくれているんじゃないかって。 そんな勘違いのせいで俺も絆されて、彰仁君の事を好きになってしまっている気がする。 「勘違い?」 九つも年下の相手にこんな風になっているのが恥ずかしい。 顔が熱くなってきて、俯く。 「ああ、なるほど。そういうことか。」 彰仁君は一人で納得して、俯く俺の肩にトンと触れた。 「別に勘違いしてもらっても構いません。俺には番はいないし、優一さんが勘違いしたところで怒る人はいません。」 「そういう事ではないんだけど……」 どうやら誤解が生じてる。 彰仁君はもしかして鈍いのかもしれない。 アルファで頭が良くて格好いいのに。でもきっとこの鈍いところがギャップになっていいんだろうな。 「彰仁君が俺の事を大切に思ってくれているんじゃないかって、勘違いしてしまうってことだよ。」 「……俺が、優一さんを?」 「うん」 彼は少し考えた後、ビシッと固まって顔を赤くさせた。

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