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背伸び 悠介side
「ぱぱぁ!もう無いの!赤が無い!」
そう言って夕陽が見せてくるのは十二色入りの色鉛筆。
確かに、赤色はもう残り三センチくらい。その他に青と黄色もそれくらいの長さになっている。
どうしてもっと早く言わないんだろう。三センチの色鉛筆なんて使いにくくて仕方がなかっただろうに。
「本当だね。赤色もう無いね。でも青と黄色も無いよ。」
「これはまだあるよ!」
俺には基準がわからない。
「そっか」なんて適当に返事をして、「買いに行く?」と夕陽に聞けば大きく頷いた。
「じゃあちょっと、ママに伝えてくるから準備して待っててくれる?」
「うん!」
自分の部屋に走って行った夕陽を見て、座っていた椅子から腰を上げ寝室に行く。
今日は風邪を引いたようで体調が悪い旭陽はベッドで眠ったままだ。
「旭陽」
「……どしたん」
声を掛けると薄く目を開けた旭陽はやっぱりしんどそうで、頭を撫でて額にそっとキスをした。
「病院行かなくて本当にいいの?」
「うん、大丈夫。」
「そっか。……あのね、夕陽と少しだけ出かけてくる。色鉛筆が無くなっちゃったみたいで。」
「あ、赤色やろ。前に大分短くなってるから買いに行こうって言うててんけど、ずっと『まだある』って言うからさ……。あんな短いの持たせてたらそんなにお金ないんかって思われると思って俺は嫌やってんけど……。」
「青と黄色も短かったけど、それはまだあるって言ってたよ。」
「……基準がわからんな」
旭陽にもわからないんだ。くすくす笑っていると「ぱぱぁ!早くぅ!」と言いながら夕陽が寝室にやって来た。
けれどすぐに旭陽を見て寂しそうな顔をする。
「まま、大丈夫?痛い?」
「痛くないよ。パパと買い物行くんやろ?好きなお菓子買ってもらい。」
「うん。ママは何が欲しい?」
「んー……あ、牛乳と……」
旭陽は俺と夕陽が思っていたのと違い、昼御飯と晩御飯の材料を言い出したから慌ててメモを取る。
「ママ、もしかして……」
「うん?」
「晩御飯はハンバーグ?」
「正解」
夕陽はキャッキャと喜んで、旭陽の頬っぺにチューをする。
準備が終えた俺と手を繋いで、家を出た。
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