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背伸び

自転車で行こうとしたのに、夕陽はどうしても車に乗りたいらしく、車で行くことにした。 後部席のチャイルドシートに夕陽を座らせて運転をする。 「お菓子じゃなくて他に欲しい物ある?」 「他にぃ?」 「おもちゃとか」 「ううん、夕陽はね、赤色とお菓子だけ!」 せっかく車でのお出かけだから大きめのショッピングモールに行き、夕陽と手を繋いでモールの中を歩く。 「赤色どこぉ?」 「赤色はあっちかな。あ、夕陽、この服可愛いよ。着てみない?」 「着てみなーい」 「そっか」 あのヒラヒラの服可愛いのに。 夕陽が着たら可愛さが爆発して最早天使になるはずなのに。 「パパがあれ買ったら着てくれる?」 「いいよ」 「本当?ちょっと待って……夕陽やっぱり着て欲しいな。だめ?」 「いいよ!」 よし!と小さくガッツポーズをして夕陽とお店に入る。 試着をさせて、あまりの可愛さに口を覆う俺。 夕陽は頼んでなくても可愛らしいポーズをとって俺を喜ばしてくれる。 「買おう!」 「うん!」 旭陽に怒られるかもしれないけど、その調子で三着ほど購入し、夕陽の機嫌が少し悪くなってきたところで謝罪の意味を込めてアイスクリームを買ってあげた。 「パパ!赤色!早く!」 「うん、ごめんね」 でも賢い夕陽はそんな俺の魂胆をもわかっているようだ。 夕陽は赤色と、それから俺が勧めて青と黄色を買うと決めてくれた。 どうせなら十二色じゃなくて、三十六色の色鉛筆を買おうかと言ったけれど、首を振られてしまった。可愛い娘には何でも買い与えたくなる。 「お菓子!夕陽の買い物はお菓子なの!」 「うんうん。あ、走っちゃダメだよ。危ないからちゃんとお手手繋いで。」 「だってパパ遅いんだもん!」 ぷくぷくの頬っぺを膨らます。 またまた可愛いなぁと思いながら、夕陽と手を繋いでお菓子売り場に向かった。

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