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朝帰り事件
項垂れる。
別に浮気を疑ったわけじゃない。
ていうか偉成が浮気をするわけがないとわかっている。
確かに女の人と一緒に一晩を過ごした事は許し難いし物凄く腹が立つけど、過ぎた事をとやかく言っても事実は変えられないし。
「番のいるアルファが番じゃないやつと一晩過ごすっていうのが有り得ねえ……。」
匡はアルファとしてその部分が許せないみたいだ。
そう言われると、気にしないでおこうと思っていた事まで気になって負の感情が溢れ出てくる。
「でも何で謝らなかったの?俺はそこが本当に気になるんだよ。いつもなら何かあればすぐに伝えてくれるのに。」
「他の人と過ごした手前、なんて謝ればいいのかわからなかったんじゃない?」
「そういうもの?」
「他の人と一緒に寝てました。ごめんなさい、でお前は許せる?」
優生君の言葉に疑問を持って、アルファの匡に聞くとそう聞き返され、考える。
偉成にそう言われたら……。
「許せないね。寧ろ腹が立つ」
「兄貴はそうなるだろうと予想して言えなかったんだろ。」
「……そっか」
帰ってからも、何も言わないでいるべきなのだろうか。
「俺からは何も言わなくていい?」
「いいだろ。何も気にしてませんって態度をとっている方がショックなんじゃないか?」
「そう?じゃあ、そうする。」
弟の匡が言うんだから間違いないだろう。
俺もショックだったんだ。偉成も少しくらい同じ気持ちになればいい。
運ばれてきたランチを食べて、その後は今度時間を作って遊びに行こうと約束をして、十三時頃に解散した。
家には偉成がいるのかな。
大学に行っているかもしれない。
どちらにしても俺はいつも通りを貫くだけだ。
昔なら怒り狂っていただろうけど、今は大丈夫。俺はきっと少し成長した。
両手いっぱいの荷物が重たい。
家に着いて廊下に荷物を下ろす。
玄関に偉成の靴はなくて、やっぱり大学に行ったんだな。と思いながら靴を脱いだ。
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