778 / 876
愛されたい
目を覚ますと彰仁君に抱きしめられたまま、ベッドの上で眠っていた。
目を開けた途端綺麗な顔があると正直びっくりする。
自分でベッドに寝転がった記憶が無いので、彰仁君が運んでくれたんだろう。
時計を見ると時刻は朝の六時。でも今日は土曜日で仕事は休みだ。
彰仁君を起こすのは申し訳ないから、身動ぎできないままでいる。
綺麗な肌だなぁと思って頬っぺたに触る。
すべすべだ。でもちょっと冷たい。
そのまま高い鼻を突いたり、プルプルな唇に触れて遊ぶ。
「──優一さん、まだ早いのでもう少し寝かせてください。」
「あっ、ご、ごめんなさい……っ」
どうやら起こしてしまったみたいだ。
慌てて手を離すと、薄く目を開けた彰仁君に小さく微笑まれる。
「可愛い悪戯ですね。」
「あの……昨日も君が運んでくれたんだよね。ごめんね。」
「いいえ。疲れてたんですよ。気にしないで」
俺よりずっと年下なのに、どうしてこんなに包容力があるんだろう。不思議すぎる。
俺には微塵もないのに。
「今日は休みですよ。あとちょっと、俺と一緒に二度寝してください。」
「うん、ごめんね。」
より体を密着させる。
彰仁君の匂いをくんくんと嗅ぐと、眠たくなかったのに一気に眠気がやってきた。
そしてそのまま九時頃まで眠って、二人揃って目を覚ます。
朝のほわほわした空気のせいか、彰仁君に甘えたい。
ベッドに座る彼にスリスリと寄ると腰を抱かれて胸がきゅんっとした。
「優一さん、また甘い匂いがします。俺の好きな匂いだ」
「本当……?何だろうね」
「……」
何かを考え込む彰仁君。険しい表情をしている。
「彰仁君?」
「……朝御飯にしましょうか」
ニコッと微笑まれ、無意識に頷いていた。
なんていう笑顔の破壊力。俺はもう幸せだ。
「……また匂いが濃くなった」
「ん?何か言った?」
「いえ」
ぼそっと呟いた彰仁君の言葉が聞き取れなかった。
朝御飯は決められた部屋で食べる。基本的に俺と彰仁君の二人だけ。時々御家族とタイミングがあって一緒に食べる時もある。
今日も二人だけで朝食をとり、ほんのり甘いクロワッサンを食べた。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!