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甘いひととき 旭陽side

放課後。教室の窓から中庭を見下ろす。 池の前にベンチがあって、そこに寝転がるのは俺の番。 もう秋から冬に変わる時期やのに、そんなところで寝とったら風邪を引く。 教室を出て、あいつのおった場所まで行くと、スースーと寝息を立てて眠っていた。 「悠介」 「……」 名前を呼んでも起きひん。 ベンチの前にしゃがみこんで、間近で顔を見る。 綺麗に整っていて、まるで彫刻みたい。 睫毛も長くて、鼻も高いし……完璧やと思う。 「ゆーすけ」 何回呼んでも起きやんくて、ちょっとした好奇心と愛しさに駆られ、辺りを見回し人が居ないことを確認してから、薄い唇に、自分のそれを重ねる。 「……ふふっ」 いつも悠介に好き勝手されて、よくわからんくなるのに、今はこうやって遊べて面白い。 「起きやんの?もっとちゅーしちゃうで」 楽しくなってきて、まだ起きないのをいい事に何度もキスすると、そのうち悠介の口角が上がっているのに気が付いた。 「……起きてんのか。殴られたくなかったら正直に言え。ほんで目を開けて謝れ」 「起きてます。ごめんなさい」 慌てて起き上がった悠介が、じっと俺の目を見て謝るから可笑しくて思わずケラケラ笑ってしまう。 「ちょっと、旭陽さん。何笑ってるのさ。俺は殴られないように必死だったのに。」 「やって、焦りすぎ!」 溢れてきた涙を拭うと、悠介も釣られたように笑い出す。 「可愛かったなぁ。天使みたいだったよ。あ、今の笑顔も天使だけど。ていうか女神?」 「しょうもな。そんなんええからはよ起きて中入り。風邪引くよ」 「心配して起こしに来てくれたの?ありがとね、大好きだよ。」 「……。お前ってほんま、簡単に好きとか言うよな。軽くてほんまか疑ってまうわ」 「ほんま」 突然の関西弁。いつも自分が話してる言葉やのに、悠介が話すとドキドキする。 「信じてくれないの?」 「……そういうわけとちゃうくて」 「ふぅん?」 「なあもう、寒いから中入ろ?」 悠介の手を取って、引っ張って校舎に入る。 外におったくせに暖かい手。俺の手の方が冷たくて、キュッと強く握られた。 「冷たいね。そんなに寒かった?」 「別に」

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