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お試し期間
話しても結局会長候補は挙がらなかった。
先輩達は困っていたけど、寒沢先輩だけ「いや、あのさ」とキョトンとした顔で言い出した。
「こいつでいいじゃん。生徒会長」
「へ……?」
頭にポンと置かれる寒沢先輩の手。
ポカンと口を開けて先輩を見上げる。
「さっき挙がった生徒会長に求める人物像ってさ、周りを見て意見を聞いて、行動に移せる奴だっただろ?それなら宮間がそうだろ。ちょっと強引なところあるけど、そういう奴の方が向いてる。」
「……寒沢先輩何言ってんの」
「何か問題あるのか?」
先輩が首を傾げる。
問題はある。
「俺はオメガやで。今までの生徒会長は全員アルファ。それに誰もオメガの言うことなんか聞かんよ。」
「関係ないだろ。なあ、赤目。」
「ああ。確かに関係ないし、適任だと思う。でも本人が性別について気になるなら、強要はしない。」
適任って言って貰えるなんて、光栄以外の何物でもない。
でも、俺に本当に務まるのかと不安しかない。
「……ちょっと、わからない、です……」
俯くと、寒沢先輩が溜息を吐いた。
あ、ちょっとそれ傷つく。俺やってアルファやったら喜んでやってたよ。
話はそこで一度終わり、俺は逃げるように立ち上がる。
「すみません。帰ります」
そしてそう言って寮に帰った。
寮に戻り、シャワーを浴びてベッドに寝転ぶ。
狭い部屋。こんな狭い部屋で暮らしているって母さん達が知ったら驚くんやろうな。
実家は大きな邸みたいな所やし、自分の部屋は随分と広い。
俺の家は金持ちやから、このまま卒業をすれば俺は好きじゃない人と番にならないといけなくなる。
「先輩……」
寒沢先輩が番になってくれたらその問題は解決するのに。
……いやいや、それより今は生徒会長のことで悩まないと。
ああ、もう、どうしたらいいんやろう。
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