「みーやまくん！」 赤目先輩は教師に話をしに、井上先輩は雑用でいなくて、生徒会室には千紘先輩と二人きり。 昔俺はこの先輩に酷いことをしたのに、全く気にしていない様子で接してくれる。 「はい」 「寒沢君のこと好きなの？」 「え……」 直球に聞かれてオロオロしながらも頷いた。 「じ、実はですね、今お試しで付き合ってて……」 「え！？」 「……でもやっぱりもうやめようと思うんです。俺は寒沢先輩みたいに堂々と出来ないし、好きな人が番になってくれたらって思ったけど、脈無いし。」 「……それ本気で言ってる？」 千紘先輩の怪訝な顔は久しぶりに見た。 頷くと深い溜息を吐かれる。 「脈はあると思うけどなぁ。じゃないと……あ、ダメだ。秘密だった」 「秘密？」 「ごめん！何も聞かなかったことにして！でもとにかく脈はあるから！俺が保証するから！」 バタバタ慌てて俺から離れた先輩。 なんなんや、と思っているとドアが開いて赤目先輩が帰ってきた。 「赤目先輩、これ」 「ありがとう」 預かっていた資料を返して、やることは無くなり、そのまま帰ることにした。 とぼとぼ帰っていると、ベータの寮の傍で寒沢先輩を見つけた。 どうやらベータの子と話しているみたいで、それも普段はそんなに話さない先輩の方からたくさん何かを伝えている。 声を掛けようとしたけれど勇気が出なくてやめた。 大切な話なら余計に邪魔しちゃだめだし。 今はスルーしようとして足を進めた時 「宮間！」 「はいっ！」 名前を呼ばれて咄嗟に返事をした。 寒沢先輩だ。振り返れば駆け寄ってくる。 「おいお前。仮にも恋人の姿を見てスルーするとはいい度胸してるな」 「えっ、え！？そんなつもりじゃ……」 「ちょっと付き合え。」 「えぇっ！」 腕を掴まれ今俺が歩いてきた道を戻って行く。 「先輩！どこ行くん！」 「生徒会室」 「今帰ってる途中やったのに！」 「いいから黙ってついてこい！」 強引な人。俺の事ちょっと強引なやつって言うてたけど、あんたもそうやんか。