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お試し期間

その後も度々言い合いながらも一緒に過ごして、夕方頃に寮に帰る事になった。 寒沢先輩と二人で手を繋いで道を歩く。 そういえば俺、全くお礼を言えていない。 「先輩、いろいろありがとうございます。」 「別に。」 「嬉しかったです。本当に。」 「そのくせに怒ってたけどな。胸倉掴まれたのなんか初めてだわ」 「……ごめんなさい」 謝ると、でもあまり気にしていないみたいで、髪をぐしゃぐしゃにされた。 下から睨みつける。軽くポンポン撫でるだけでいいやんか。 そういえば、この人とのお付き合いのお試し期間をやめるって言うんやった。 いざ言おうとしても喉が詰まる。 「何?言いたいことあんの?」 「……」 チラチラ先輩を見上げていたから、言いたいことがあるってバレたらしい。 足を止めて、地面を見る。 「先輩」 「うん」 「お試し期間……やめます。」 「あっそ。予定より随分早かったな。」 手がパッと離れた。 嫌やな。追いかけたくなる。 「で、お試しをやめて、これからどうすんの?」 「……え、っと」 「決めてないなら俺が決める」 もう二度と近付くなとか、話しかけるなって言われんのかな。 そりゃあ、いっぱい迷惑掛けてるし……でも、そんなん嫌。 先輩のこと、ほんまに好きやのに。 「お試し期間は終了。だからこれはお試しじゃなくて、俺ら普通に付き合おう。」 「……ん?」 「俺はさ、凄く面倒臭がりだ。お前も知ってるだろ?」 「うん」 何を言われてる? 上手く理解できなくて眉を寄せる。 「自分で言うけどさ、そんな俺がお前が生徒会長になれるように、わざわざ生徒に聞きまくったってなかなかな事じゃないか?」 「……確かに」 「昨日の夜お前と話して、お前がやりたいって言ったこと全部やらせてやらないと後悔するって思った。今日も泣いてるお前を見て慰めてやらないととか、励まさないととか……多分アルファの本能だけど、そういうのを感じたんだ。」 アルファならオメガを守らないとって本能で思うのは普通のことやないのか。 ぐっと眉間を寄せると、できた皺をグリグリと人差し指で押してくる。 「俺は今までオメガにそういうのを感じたことがなかったんだよ。だから抱いては捨てを繰り返してた。その後どれだけ言い寄られても無視してた。」 「最低」 「うん、最低だな。でも本気じゃないって伝えてたし合意の上だから。」 それもそれで複雑やけど。

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