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ゆるすひと

「俺も子供欲しい……」 「可愛いでしょ、うちの夕陽は。だって俺と旭陽の子供だもんね」 隣に来た高良に夕陽ちゃんを奪われた。 「パパぁ!おかえり!」 「ただいまぁ」 パパ……呼ばれたい…… 両手で顔を覆う。こんな尊い存在が家にいるなんて、きっと高良は嬉しくて堪らないはずだ。 大切な人とその人との間に生まれる子供が尊くないわけが無い。 「いっせー?どうしたの?」 「どうしたんだろうね。夕陽、いっせーの頭ポンポンしてあげて」 「いいよ!いっせー大丈夫だよ!」 小さな手に頭を撫でられる。 癒しだ。堪らない。 「夕陽ちゃん、ありがとう。旭陽さん!何か手伝います!」 もっと子供が欲しくなりそうで慌てて立ち上がった。 旭陽さんのいるキッチンに顔を出すと、旭陽さんは驚いていたけれどなりふり構ってられるか。 「どうしたん?千紘と喧嘩?」 「喧嘩じゃないです」 「じゃあ何?」 「……俺、子供が欲しいんです。」 「あー、なるほどね。千紘はまだ嫌って?」 「……生でさせてくれない」 「うっわ、ちょっと待って、そう来ると思わんかった。」 苦笑を零して若干引いている旭陽さんに「ごめんなさい」と謝る。 「いや、いいけど……。それで、させてくれへんから悲しくなったんや?」 「はい。でも俺ももう少しで卒業だし、千紘も高校の時から子供を欲しがってたから……」 「拒否されたん?」 「話し合おうって言われました。」 「え、じゃあ話し合えばいいやん。」 旭陽さんの言葉は正論だけど、頷けない。 「嫌って言われたら、ショックだし……。それだけじゃなくて嫌な理由は?そもそも俺のことが嫌になったとか……?そうなったらもう……生きていけないです……。」 「偉成君ってそんなキャラやったっけ。高校の時はもっとこう……生徒会長!って堂々とした感じやったのに」 「アルファは自分の番のことになるとなりふり構ってられないんですよ。」 「納得した」 寂しい。俺が大学に行って長い間待たせたから、気持ちが変わってしまったのかもしれない。 「旭陽さんは?子供欲しいって言われた時、悩みましたか……?」 「あー、俺は悩んでる暇もなかったから……」 「そっか……。ここに来たらいつも思うんです。旭陽さんと高良と夕陽ちゃんが幸せそうな姿を見て、俺も千紘と千紘との子供とこうして幸せに暮らしたいなって。」 千紘もそう思ってくれていたらいいのだけど。

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