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好奇心 優一side
俺は彼が怒ったところを見た事がない。
気分がハイになっているところも、逆に深く落ち込んでいるところも。
「君は本当に人間なんだろうか。」
「……本気でそう思ってるなら、貴方相当な馬鹿ですね?」
「……ごめんなさい」
疑って聞いてみたら呆れた顔をされたので、謝って黙った。
だっておかしい。こんなにも喜怒哀楽の薄い人間を俺は見た事がない。
俺の家族は皆そうだった。俺がオメガだったからか、いつも怒っていたか呆れて落ち込んでいたか……そんな記憶しかない。
「彰仁君」
夜も遅い時間。未だ仕事をしている彼の背中にぴとっとくっつく。
パソコンに目を向けたまま、ポンポンと頭を撫で「後でね」と言われてしまい、年上としての威厳は皆無だ。元々そんなものは無いけれど。
でも、そこでちょっとした好奇心に駆られた。どきどきしながら彼の首に腕を回して強く抱き着く。
「どうしたんですか、優一さん。」
「……ふふ」
鬱陶しいと剥がすことなく好きにさせてくれる彰仁君。首に回していた腕を動かし、今度は両手で彼の目元を覆う。
さすがに仕事の邪魔をすれば彼だって怒ると思うから。
「優一さん?」
「……」
「……何がしたいの」
俺の手の上から、手を包んだ彰仁君は顔だけ振り返って苦笑する。
「どうしたんですか」
「……」
「おーい。何か怒ってる?」
彰仁君を怒らせようとしてるのに、何でそんな反応なんだ。邪魔だなぁって怒ってくれていいのに。
「彰仁君は何で怒らないの?」
「怒る?……え、どこに怒る理由があったんですか。」
「今、俺は君の仕事の邪魔をしてる」
「邪魔……いや、こんなこと滅多にないので寧ろ嬉しいですけど。」
「嬉しい!?」
この子はおかしい!
驚いて口を両手で覆うと、彰仁君は首を傾げる。
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