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好奇心
「いいなぁ、子供。」
ポツリと呟くと、彰仁君がそれに大きく反応して俺の手を掴む。
え?と思うよりも先にキスをされて、驚いて目を見開いた。
「俺達も子供作りましょうね。」
「……あ、えっと……次の発情期で、お願いします……」
手を離させて時計をちらりと見る。
もう夜の九時前。俺はそろそろお風呂に入りたい。
「お風呂に入ってきてもいいかな。」
「はい。……あ、俺も一緒に入ろうかな。」
「何言ってるの。ダメです。」
「え……ええ……?ダメですか……?」
何でそんなにショックを受けているんだ。
眉尻を下げる表情に、胸がキュンとしてしまう。
「先に入る?」
「そうじゃなくて、一緒に入りたいです。」
そういうことを彰仁君は滅多に言わない。
暫く真剣に悩んで、「ダメですか?」と何度も聞いてくる彼に折れた。
「じゃあ、一緒に入ろう。」
そもそも俺はここに居候しているようなものだし、そんなに拒否をする権利は元々ないと思う。
着替えを持ち、二人で風呂場に移動して服を脱ぐ。俺の貧相な体を彼に見せるのはいつだって気が引けるけど、潔くいかないと。
お風呂場に入ってお湯を被る。先に髪と体を洗って湯船に浸かった。
「何でそんなに離れるんですか。もっとこっちに来てください。」
「あ、もう充分なので!これ以上近づいたら俺の心臓が持たないので!」
浴槽の端っこに行って彼を見なくて済むように壁をじっと見る。これであと少し我慢すれば俺の心臓は守られる。
そう思っていたのに、突然湯船がちゃぷちゃぷと揺れて、ぴとっと背中に何かが触れる。
「そんなに端に行かないでください。寂しいです。」
「っな」
「な?」
「なんてこった……」
背中に当たるのは彼の胸。
腕は胸に回されて、隅っこから真ん中まで移動する。
彼の足の間に体を入れて座る。その体勢で落ち着いた。
「温かいですね、優一さん。」
「……はい」
「……そんなに嫌でしたか?一緒に入るの、もうこれが最後?」
「ち、ちがう……あの……やっぱり恥ずかしくて……」
年下にこんなに翻弄されて、体を見られることもだけど、それもすごく恥ずかしい。
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