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好奇心

次は俺には馴染みのない高級ブランドの洋服店に着いた。恐慄いて車から出ようとしない俺の腕を引っ張って無理矢理車から降ろした彰仁君は、そのまま俺を試着室に案内する。 「スタッフが服を持ってくるので、着替えたら一度見せに出てきてください。」 「ええ……」 「返事は?」 「はい」 そうして直ぐに服が届けられた。 明らかに高い。値札に書いてある値段は零が多すぎると思う。 それに自分じゃ絶対選ばないデザインだ。 似合うはずがない……と思いながら服を着て、試着室を出ると、彰仁君は考えるように黙ってしまって、つい服の裾をきゅっと握る。 「次はこちらにお着替えください」 「あ、ありがとうございます。」 二着目を渡され、試着室の中に戻る。 そもそもこの試着室だって広すぎる。こんなところの服を着ることになるなんて、人生わからない。 「着替えましたー……」 試着室のドアを開ける。 「あ、可愛い。」 彰仁君が第一声にそう言って、俺に近づく。 「靴、これ履いて……うん。これいい。優一さん、可愛いです。」 「あの、三十の男に言うセリフじゃない……」 「可愛いです。後ろ向いて」 ぐるっと後ろを向く。大きな鏡が自分の姿を映している。 普段は絶対着ない服だけど、彰仁君が褒めてくれるなら着たい。 「優一さん、これにしませんか?これ、すごく似合ってます。」 「あ……うん。これ、これにします。」 彰仁君がにこにこと笑っている。 その顔、すごく可愛いよ。引き寄せて髪をぐしゃぐしゃにするくらい撫でたいけど、その思いを押し殺した。 試着室に戻って服を脱ぎ、着てきた服に着替えて外に出る。 彰仁君に手を引かれて椅子に座っているように言われ、大人しくそうしていると、すぐに手に紙袋を持った彰仁君が戻ってきた。 「さあ、帰りましょう。」 「彰仁君のは?」 「俺のは招待状が来た時に買っています。そろそろお腹が空いたでしょ?ご飯に行きましょう。」 そっと手を取られ、店の外に出る。 スタッフさんは店の前まで出てきて深々と頭を下げていた。正直やめてほしい。すごく緊張するから。 車に乗り、向かうのは一般的なレストラン。ドレスコードは特にないらしく、ほっと息を吐いた。

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