828 / 876

好奇心

二人は挨拶に行ってくると言って、腕を組んだまま別の所に行った。 彰仁君に「ねえ」と声をかけると「はい」と俺の顔を見る。 「あの二人は夫夫で、番?」 「番ですよ。それも運命のね。」 「え……あれって都市伝説じゃないの?」 「俺もそう思ってましたけど、あの二人の様子を見てたら本当なんだなって。」 ウェイターさんがシャンパンを運んでくる。 それを頂いて一口飲むと、美味しくて咄嗟に彰仁君を見て「美味しい!」と言っていた。 「良かったですね。……あ、優一さん。ちょっと来てください」 「はーい」 シャンパングラスを持ったまま、彰仁君に連れられて行った場所には、小さな女の子がいた。 その女の子の両隣にはそれぞれ男性が立っている。 「高良」 「あ、東條じゃーん!旭陽覚えてる?生徒会の会計だった奴。」 「うん、覚えてる。お久しぶりです。旭陽です」 高良と呼ばれた男性は、手を繋いでいた女の子を抱き上げる。 「うちの可愛い可愛い娘だよ。夕陽、挨拶しようね。」 「うん!夕陽はね、夕陽だよ!」 「うん。俺は彰仁だよ。小さい頃にあったことあるんだけど、覚えてる?」 「うーん、わかんない!」 なんて可愛いんだろう。笑顔がお花みたいだ。 旭陽さんが俺をちらっと見て、慌てて頭を下げる。 「初めまして。えっと……彰仁さんの番の優一です。」 「え、番……」 「あー!そういえば前に言ってたな!お前もついに番が……嬉しいよ俺は。」 高良さんが彰仁君の肩をばしばしと叩く。 俺はそっと旭陽さんに抱っこされている夕陽ちゃんに近づいた。 「夕陽ちゃん、優一です。よろしくね」 「うん!ゆういち!」 「こら、優一さんやろ。すみません……」 「いえいえ。お幾つなんですか?」 「もうすぐで三歳です。」 可愛い可愛いと言っていると、夕陽ちゃんが俺に手を伸ばしてきた。 「夕陽可愛いからね、抱っこさせてあげる。」 「えー、いいの?」 「いいよ!ママ、ゆういちのところ行く!」 旭陽さんは困った顔をしている。 気にしないで、むしろ抱っこさせてと笑ってみせると、抱っこさせてくれた。 「あの、優一さんはお幾つなんですか?」 「俺は二十九です。」 「あ、同い年くらいかと思ってました。ごめんなさい」 「いえいえ。若く見えます?それなら嬉しいな」 夕陽ちゃんの小さい手が、俺の頬をペちっと叩いた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!