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だからお前は

病院に連れて行くまでの間に、ちゃんと食事はとっていたのか、水分補給はしっかりしているのか、と聞くと「おかんやな」と言われて顬辺りがヒクヒクする。 「おい、ちゃんと答えろ。」 「ご飯は……あー……果物食べてた。それで水分補給してたから、意識的にはしてないかも。」 「クソだな」 「ひど……てか喉痛い……」 俺にもたれ掛かり、目を閉じた純。 近くの病院に連れて行き、辛そうな純を見てベッドを貸してくれ、そこに寝かせると少しして医者がやってきて、純の診察をしてくれた。 どうやら扁桃炎らしい。 熱がなかなか下がらなくて水分も取れていないと伝えると点滴をすることになり、しばらくの間ベッドで眠る純の隣にある椅子に腰かけて、点滴が終わるのを待つ。 本当に……何で三日も我慢したんだか。 早くに連絡をくれていたら……。過ぎた事をどうこう言っても仕方が無い。でも溜息を吐くくらいは許してほしい。 純は基本的に頼ることを知らない。 ギリギリまで一人で考えて、無理だと思った時にやっと他人に力を借りる。 性格だから仕方が無いにしても、今回みたいなのは困ってしまう。 一人で寮で暮らさせるのをやめさせるか? そうすれば何か変化があったとき気付きやすいかもしれない。 俺が卒業するまで純とは一緒の部屋で過ごしていた。 卒業したら、俺と一緒に暮らしてくれると思っていたのに、純はオメガの寮に戻ると言って聞かなかった。それで一度喧嘩をしているが、結局俺が折れて今のようになっている。 でも、今回のことで俺と一緒に暮らした方がいいと純も分かったはずだ。 何でも言える相手が傍に居るのと居ないのとでは、気持ちの持ちようが違う。 話をしてみて聞かなかったら、最悪、仕事を抜け出してきたんだぞって、ちょっと文句を言ってみても問題ないと思う。 点滴はそろそろ終わりそうで、沈んでいた純と意識も浮上して、俺を目に映すと「ごめん」と謝ってきた。 「何がごめん?謝らなくていいから、まだ眠いんだろ。寝とけ。」 「ん、でも……」 「運んでやるから。大丈夫」 純の目元に手を翳す。 視界が暗くなったからか、純はまた体から力を抜いて眠りに落ちていく。

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