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オレンジ

気がつけば車の中に居て、後部座席で一人寝転んでいた。 いつ意識が飛んだんだろう。覚えていない。 運転席には彰仁君がいる。 「彰仁君だぁ」 「あ、起きました?」 「何で、こんなに離れてるの……?嫌だよ、彰仁君の隣がいい。」 「もう着きますから、ちょっと我慢してくださいね。」 家の駐車場について、ドアが開かれる。 手が伸びてきて掴むと、ぐいっと引っ張られた。 彰仁君の胸の中に入って、くんくんと匂いを嗅ぐ。 「歩けますか?」 「うん」 手を繋いだまま、大きなお邸に入って、自分達の部屋に着く。 その瞬間彼に甘えたくなって、スリスリと肩に擦り寄った。 「お風呂は……まだダメだな。お水飲みましょう。」 「彰仁君」 「はい」 「んー……」 背伸びをして唇に自分のそれを押し付ける。 ハムハムと下唇を噛むと、彰仁君の大きな手が後頭部に回された。唇を割って舌が入ってくる。 「ふ……ぁ……」 「橋本さんとは普段から仲良いの?」 「ううん、今日初めて砕けた感じで話せたよ。普段はね、すごく優しくて、頼りになる人!」 腰に回された腕によって体が密着する。 「会社で、仲のいい人はできた?」 「あー、あ、うん。橋本さんが初めて」 「……俺のせいで皆気を遣ってるんだろうな。」 「ううん。俺がフレンドリーになれないからダメなんだよ」 抱っこされ、ソファーに座らされる。 水を用意して飲ませてくれた彼は、申し訳なさそうな表情をしていて、少しだけ気持ちが滅入る。 「ごめんね」 「ん?何が?」 つい謝ると、彰仁君は小さく笑った。 「俺もっと頑張るね」 「優一さんはいつも頑張ってるよ」 頭を撫でられて、気持ちが晴れる。 抱きつくと、抱き締め返してくれて、大好きだと再確認した。 「今日はどうして橋本さんとご飯に行ってたの?電車で帰るって言ってたけど」 「一駅歩いて帰ろうと思って、一個前の駅で降りたんだ。」 「へえ?」 「あ!そうだ、すごい綺麗な写真撮れたんだ!見て!」 スマートフォンを出して彰仁君にさっき撮ったオレンジ色の空を見せる。 「綺麗でしょ!」 「うん、綺麗だね。」 「本当はすぐに彰仁君に送ろうと思ったんだけど、橋本さんが声掛けてくれてね。これ送って帰ってくるの待ってるよー!って連絡しようとしたんだよ」 「……可愛い」 「え……?え、え!?うわっ!」 ソファーに押し倒され、何度も唇が重ねられる。 服の中に手が入ってきて、慌ててそれを押える。ちょっと待って。 「しないよ!?」 「え……しないの?」 「しない!酔いも覚めた!もう大丈夫!お風呂入ってくる!」 「……多分まだ酔ってる」 目を逸らしてそんなことを言った彼に、思わず笑ってしまう。 「彰仁君が年下に見えた。可愛い」 「可愛い年下のお願いを聞いてくれませんか」 「ごめんね。明日も仕事だから、金曜日と土曜日の夜ならいいよ。」 「言いましたからね。次の金曜と土曜は抱き潰しますからね。約束ですよ。破ったら罰が当たりますからね。」 ムスッてしながらも理解を示す彼に大きく頷く。 明日は出来れば一緒に帰宅して、今日みたいに慌ただしくないゆっくりした時間を二人で過ごしたい。 「あ、そういえば、橋本さんに彰仁君の惚気話をしちゃったんだけど、よく考えたら君は上司に当たるし、失礼だったよね。ごめんなさい。」 「その惚気話を聞かせてください。」 「秘密です。」 そんなある日の夜のこと。 オレンジ 了

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