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秘密事 彰仁side

最近、優一さんの様子がおかしい。 発情期とかそういった事ではなくて、何かを不安がっている様子。 話したくないことらしく、どうしたのか聞いてみても、笑って「何でもない」と言われるから、それ以上聞くことができていない。 それがもう、一週間続いている。 そして今、時刻は午前三時。 辛そうな声に起こされて隣を見てみれば、彼は苦しそうに魘されていた。 部屋は涼しいのに、汗をかいている。 「優一さん」 声をかけ、そっと肩に触れると驚いたように飛び起きて、それに俺が驚いた。 自分の腕で自身を抱きしめる彼は、睨むように俺を見たあと首を左右に振って俯いた。 「大丈夫?」 明らかに大丈夫ではないけれど、とりあえず話しかける。 彼は頷いて、けれど顔は上げない。 「……汗かいてるから、タオル持ってきましょうか。それともシャワー浴びる?」 「シャワー、浴びる……」 「わかりました。立てそう?」 ベッドから降り、サイドランプをつける。 ゆっくりと床に立った彼は、着替えを持つとトボトボ歩いて浴室に向かった。 シャワーを浴びている間に、何が気持が落ち着くような飲み物でも用意しておこう。 そう思ってキッチンに立ち、棚を開ける。 前に気になって優一さんが買っていたカモミールティーがあったから、パッケージの作り方を読みながら作って待っていると、早々に浴室から出てきた優一さんが、フラフラ俺の元にやってくる。 「彰仁君……」 「すっきりした?これ作ってみたんですけど……カモミールティー、飲みませんか?」 「……飲む」 ソファーに移動して、ピッタリと隣に座った彼にカップを渡す。 匂いを嗅いでからホッと息を吐いた彼は、それを少し飲んでローテーブルにカップを置くと、俺にもたれかかった。 それを受け入れ、抱きしめて背中を撫でてあげると同じように背中に手が回される。 「怖い夢を見たんですか?」 「……うん。すごく、怖い夢。」 「もしかしてそれ、一週間くらい前から?」 「そう、なんだ。ごめんね、心配掛けて。気付いてたんだよね」 「いや、いつもと様子が違ったから何かあったんだろうとは思ってましたけど、夢が理由だってことは今知りました。」 ググッと腕に力を入れた彼。体勢がキツいだろうと思って、そっと抱き上げ膝の上に向かい合わせに乗せる。 「ん、彰仁君、眠れそうにない……」 「一緒に起きてるよ。ほら、丁度いいことに明日は休み。」 「……いいの?」 「もちろん。」 俺の首筋に顔を埋めた優一さんは、細かく体を震わせていた。

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