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秘密事
「あき、彰仁君」
「ん?」
震えが治まった頃、優一さんが勢いよく顔を上げた。
目を合わせると、忙しなく視線を動かして、また強く抱き着いてくる。
「どうしたの?」
「……ごめんね、情けなくて。自分でも恥ずかしいよ」
「別にそんなこと思いませんけど。」
「うぅ……最近ずっと、夢を見るんだ。昔あったこと。」
「そう。聞いてもいい話?」
「……彰仁君がいいなら、話したい、かも。」
彼の心臓がどくどくといつもより早く動いていて、緊張しているのがわかる。
優一さんに昔起こったことで俺がわかるのは、彼が一度誰かの番になってそれを解消したこと。
魘されるくらい嫌な夢なら、もしかすると無理矢理番にさせられたのだろうか。
前に聞いたのは、相手は親友で事故があってそうなったとだけ。
「あの、こんな俺にも、親友って呼べる、友達がいて……」
「こんなって……優一さんは素敵な人だから、そんな言い方はやめてほしいな。」
「あ……ごめん。えっと……親友がいてね?」
「はい」
そこからは口を出すことなく、彼の言葉に耳を傾けた。
本当に、ただ仲のいい友達だったらしい。
それがいつの間にか、友達が性別を意識しだして、初めての発情期が訪れた時、抵抗する間もなく性行為をされ項を噛まれた。
暫くはお互いに仕方の無いことだって割り切っていたけれど、そのうち相手から暴力を振るわれるようになったらしい。
反抗を繰り返すと、相手がもう優一さんを要らないと言って、番を解消した。
その時は優一さんの体を思って、医療に頼ることを決めたけれど、その時の膨大な費用は折半することになった。
元々オメガでお金のなかった優一さんは両親に相談した。
けれどそこで完全に勘当され、昼夜関係なく必死で働いていたらしい。
いくら医療に頼り番を解消したとはいえ、優一さんにら酷く負担が掛かっただろう。
俺と出会うまで発情期が来なかったのも、精神的負担が大きかったからだ。
その状態で、必死で働いていたとなると、きっと何度も辛い思いをしていたと思う。
「一番、辛かった。体も……ハッキリとはわからないけど、いつもと様子が変で、それでも働かないといけなくて、でも休憩してたらオメガなんだから働けって、言われちゃうし……。」
最近の夢では、番を解消した時の事ではなくて、そうして追い詰められていった時の事を思い出しているのか。
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