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【閑話】誉と櫂のクリスマス④

「誉、誉、ベッドの下確認してくれ」 「え?なんで?」 「腐乱死体があるかもしれない」 「ないでしょ。 というか、まず臭いでわかるよ」 「じゃあ鏡にライターの火を」 「マジックミラーもないと思うよ。 全く、また変な本読んで真に受けてるの?」 「都市伝説100選は変な本じゃねえし」 「十分変な本だよ。 もうそういう本読むのやめなさい。 ただでさえビビりなんだから」 「は?そんなことねーし!」 誉は呆れたように肩を竦めた後、俺をベッドに座らせた。 そして、 「お風呂入れてくるから、ゆっくりしてて」 と言い残しバスルームの方へと向かってしまった。 ついていきたかったけれど、さっきの"ビビり"という言葉が勘に触ったので我慢をした。 とは言え、慣れない空間に落ち着けるはずもなく、とうとう煙草に火をつけた。 「誉のやつ、遅くねえか?」 一本吸い終えたのに、誉はまだ帰ってこない。 たかが風呂入れるだけで何をしてるんだろう。 見に行こうかと思ったけれど、怖がっていると思われるのが癪なので、また我慢をした。 ベッドサイドのテーブルにあった灰皿で、タバコの先を潰しながら、どうやって間を持たせるかを考える。 そうだ、テレビでも見よう。 この時間なら深夜のニュースがやっているはずだ。 名案だ、俺はリモコンを押す。 しかしテレビに映ったのは、予想に反して"エッチ"な動画だった。 「うわっ」 それは、まさにセックスの真っ最中。 女の甲高い声と、肉がぶつかり合う音が大音量で部屋に響く。 想定外の事態に思わずリモコンを放り投げて後退る。 ワナワナと体が震えるのを自覚しながら、テレビから目を反らした瞬間、間が悪いことに誉がバスルームから戻ってきた。 「アダルトチャンネル? 何だかんだ言って櫂も乗り気じゃない」 「ち、ちげーよ!テレビつけたら勝手に!」 「ふうん。 この女優さん可愛いね、好みだな」 「んなっ! つーか何フツーに見てるんだよ」 「え? お風呂沸くまで、もう少し時間かかるし」 「やだよ、違うのにしろよ、ニュースとか!」 「…………櫂、もしかして、いやもしかしなくてもだけど、こういうの見たことないでしょ」 「んなっ、…………………悪ィか」 「はあ、ホント可愛いね、君は」 「可愛いって言うな!」 誉はやれやれと大袈裟にため息をついて見せる。 そしてベッドに腰を下ろすと、膝に乗るように促す。 勿論拒否してやったが、軽々と持ち上げられて結局乗せられてしまった。 「やだよ、離せよ」 後ろから抱く……というよりは、半ば羽交い締めにされ強制的にテレビの方を見させられる。 テレビの中の女は、こっちに向かって見事に足を開き、下から男に突き上げられていた。 思わず目を覆いたくなる生々しさだ。 しかし、両手ごと抱かれているのでそれは叶わない。 「いいなあ」 「は?」 不意に誉が、俺の頭に顎を乗せながら呟く。 「俺も、櫂とこういうことしたいなあ」 そして俺の太ももを撫でた後、ぐっと開かせた。 そのまま軽く腰を上下に揺らして、 「こんな風に思い切り突き上げたら気持ちいいよね、絶対」 なんて馬鹿なことを言う。 「何言って……あっ」 変な声が出たのは、誉がうなじを噛んだからだ。 そしてそのまま右の肩に向かって、ゆっくり甘く噛んでいく。 指先が震え始めた。 同時に、耳が熱くなってくる。 その時、テレビの場面が切り替わった。 さっきまで男女の絡みだったのだが、今度のは女優が一人でソファーに座らさせられている。 ただ、足はやはり大きく開かさせられており局部が丸出しだ。 そんな女優に、男優が二人付き添っていた。 男優の手に握られたモノが局部に当てられると、女優の脚ががくがくと痙攣し始めた。 モーター音と、女優の嬌声がやけにうるさく感じられて眉を寄せる。 すると誉が、俺の下腹をゆったり撫でながら囁いた。 「ああ、玩具もいいよね」 「オモチャ?」 「君は本当に知識の偏りが凄いなあ」 「……」 悪かったな。 そもそも"そういうこと"に興味がないんだから、仕方ないだろ。 「まあ、でもそこが可愛いんだけど……」 「だから、可愛いって言うな!」 腹が立って仕方がないので、一発パンチでもお見舞いしてやろうと抵抗し始めた時、向こうから能天気な電子メロディーが聞こえてきた。 風呂が沸いたんだ。 けれども、誉はそれを完全に無視。 うなじに鼻を押し付けながら、チロチロと首の付け根を舐め始める。 背筋がゾクッとして肩を上げると、その隙に股間に手が伸びてきた。 ズボン越しに撫でられて、俺は初めて自分のそこが反応していたことに気がつく。 羞恥心から腰を退くと、今度は尻に固いものが当たった。 「ほま、れ、やだ」 すると誉は、わざとそれが俺の尻の間に当たる様、微妙に腰を動かしてきやがる。 「やだって、いやだ」 それだけの刺激なのに、後孔がズクズクと疼き始めて俺は焦った。 誉と付き合うまで、こういうこととは無縁な人生だった。 なのに、たった半年でここまで変わってしまった自分の体に戸惑いを隠せない。 自分の意思とは関係なく誉を欲しがる体が怖くて、本格的な抵抗をした。 足をばたつかせて、がっしりしたその腕から逃れようと身を捩る。 すると頭上からため息が聞こえた。 と、同時にスッと解放される。 こんな簡単にいくと思わなかったので拍子抜けをして振り返ると、穏やかに微笑んだ誉が頭を撫でてくれた。 それから、 「怖かったね、ごめんね。 お風呂、入ろうか」 と言って俺の腰を掴み、立たせてくれたんだ。 「ちょっとビックリすると思うよ、おいで」 そして手を差し出してくれる。 逆に謝られたことで、ちょっとした罪悪感を覚えた俺は、素直にその手を取ってやった。 「すげー!!!」 素直にそう声が出たのは、二人で湯船に浸かった後だ。 だってバスタブにライトが仕込んであって、七色に光るんだぜ。 意外と綺麗だし、ちょっとテンションが上がっていいな、これ。 「だろ?ご機嫌は直ったかな」 「別に元々悪くねーし」 「悪戯されてビビってた癖に」 「ビビってねーし!」 もうホント頭来た。 誉に預けていた背を起こし、体を反転させて下から睨み付ける。 そして、すました顔をしている誉の顎先を甘噛みした後、両頬を持ち引き寄せた。 多分、キスを俺からしたのは初めてじゃないかな。 視線だけ上げると、切れ長な誉の目がいつもより開いている。 俺だってちゃんと出来るんだ、そう見せつけたくて舌を出した、が。 「ン"!!ン"ー!!!!」 がっと強く頬を取られ、迎え撃たれてしまった。 誉の舌が俺の舌をすり抜けて、口の中に入ってくる。 息苦しさを感じながら押し戻そうとすると、絡み取られ、吸われ。 それをくりかえしているうちに、舌同士が触れる度にズクンと腰が疼き始める。 「はっ、あ……、やめ」 「今のは君が悪いよ」 やっと離した口を親指の腹でなぞりながら誉が言う。 「そんなことされたら、もう手加減できない。 どういうことか、わかるよね?」 「えっ?あ、や、そんなつもりじゃ……」 「問答無用。いただきます」 そう言う誉の目は、完全に獲物を前にした獣そのものだ。 「ちょっ、手を合わせるな! や、やだ、やめっ、アッ!」 誉は、逃げようとした俺の手首をあっという間に捕まえてひねり上げる。 そして、無防備に晒された乳首に噛みつくように吸い付いた。

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