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【閑話】誉と櫂のクリスマス⑤
いつもなら、誉は俺が嫌がる素振りを見せたら止めてくれるんだ。
なのに今日は違う。
どんなに身をよじろうと、頭を押し戻そうとしても言うことを聞いてくれない。
容赦なく与えられる快感が怖くてたまらなくて、半泣きで暴れた。
けど、誉は許してくれない。
「暴れないの。
悪い子にはお仕置きをするよ」
頭を思いっきり殴ったら、流石に腹が立ったのだろうか。
誉はムッとした顔を上げて言う。
そしていとも簡単に俺を壁際に追い詰め、更にぐるりと体を反転させた。
壁に手をつき、誉に尻を晒す情けない格好だ。
振り返ろうとした瞬間、後ろから"壁ドン"されて怯んだ。
その隙に背筋を舐められて、腰が上がる。
「やだっ」
尻に落ちてくる明らかに水とは違う感覚。
開かされた太ももに、ポタポタと粘度が高い液体の粒が伝い落ちていくのが見える。
「あ……!」
後孔の縁を、誉の指がぐるりとなぞった。
それを欲して後孔がパクっと開いたのが分かるから、恥ずかしくてたまらない。
誉の指の動きに合わせて、半勃ちだったペニスがどんどん大きくなり、真ん中でふるふる揺れている。
もう見ていられなくなって、ぎゅっと固く目を閉じた。
「指、やだ、やだあ」
「君はさっきから"嫌"しか言わないね。
体はこんなに正直なのに、ほら」
「ひあっ」
一気に孔に指が挿入される。
解すように中を刺激しながら、ぐちゅぐちゅと掻き回された。
「あ、あ!」
誉が指を引くたびに、つられて腰が上がった。
その腰を押さつけられながら、ゆっくり指を抜き挿しされる。
それ自体はいいのだけれど、時折中の敏感な所をつつかれてしまい、背中が跳ねてしまう。
立ち上ってくる風呂の湯気が息苦しくて、顔を上げた。
そして目前の壁に額を押し当て、下唇を噛んでこれ以上の恥態を晒さぬように堪えた。
……が、突如後ろから響いてきた聞き覚えのあるモーター音に、俺は竦み上がった。
指が引き抜かれ、代わりに孔にそれが押し付けられた瞬間、膝から力が抜けてしまう。
「なに……?」
「あ、気づいた?」
「気づくよ!」
振り返って確認すると、誉がさっきの動画でみたのと全く同じ"オモチャ"を手にしていた。
「それ、なに、なんでここにあんの、なんで」
まさか自分にそんなものを使われるとは露程も思っていなかったから、完全に怖じ気づいてしまう。
けど、誉はあっさりしたもので、
「ローターだよ。
脱衣所の自販機で売ってたんだ」
なんて言って俺の腰を持ち上げた。
「買うなよ、そんなもの、って、あ!」
「振動が気持ちいいでしょ?」
「きもちよくない、へん、やだ!」
「でも、美味しそうに飲み込んでくよ?」
「へ?あ、やだ、あああ!」
振動が、浅いところから深いところに動いてくるのが分かる。
次第にくぐもっていくモーター音。
一方で、内壁を無理矢理かき回される感覚に身震いをする。
誉はローターを押し進めながら、俺が一番感じるところを探している。
感覚的に、それがそのすぐそばであることがわかるから、尻をよじって逃げようとした。
が、今度はぎゅっとペニスを握られてしまって、動けない。
「見つけた」
「あ、あっ、そこ、だめ!」
やんわりとペニスを擦りながら、誉はローターを俺が感じるポイント、前立腺に押し付けた。
その瞬間例えようもない快感が背筋をかけ上がる。
チカチカする視界もそのままに、頭を上下に振りながら何とかその快感をやり過ごそうとした。
それは最早本能のように思えた。
誉が体にのしかかってくる。
熱い吐息が耳にかけられ、
「このままドライしようか」
と、耳打ちをされた。
「!、やだ……」
「ダメ、女の子みたいに可愛く中でイクとこ、見せて?」
「やだよ、やだ。俺、女じゃない」
「わかってるよ。
でも、櫂の"メスイキ"可愛いんだもの」
メスイキってやつは、先週初めて経験させられた。
"初心者"にはきつすぎる快感だった。
している途中も、終わった後も、怖くて怖くてあんなに泣いたのに。
またあれをされるなんて、耐えられない。
「ほら、いくよ」
「やだ、やだよ誉、や、あ……!!!!」
一度こうと決めた誉は冷酷だ。
カチカチっという音に従って、中の振動が大きくなる。
それに伴い、腰は勝手に高く上がって行った。
そのまま誉が中で二回、前立腺をローターで刺激する。
「あ、あ……」
びくびくと下腹部が勝手に動き始めた。
足がガクガクして、体をうまく支えられない。
だから誉が後ろから腹を押さえてサポートし、更に前立腺を責めてくる。
徐々に高められていった性感は、唐突に頂点に達した。
「ん"っ、やだ、や、あああ……!」
俺は情けない声をあげながら全身を痙攣させて達する。
その瞬間、誉が肩に噛みついた。
その痛みすら気持ちよくて、更に追い込まれてしまう。
誉の目論見通り、射精はない。
だらりと萎えたペニスから、先走りのような透明の液体が一筋湯船に向かって溢れているだけだ。
それを大きな手で包むように持ち揉みながら、誉が言う。
「ねえ、櫂。
メスイキってね、やり過ぎちゃうと"こっち"が使えなくなっちゃうんだよ、知ってた?」
いや、知ってる訳ねーだろ。
そう答えたかったが、息は絶え絶え。
ローターを引き抜かれただけで、びくんと体が震えてしまう始末だ。
だから言葉はあえぎ声に取って変わられ、うまく返すことができない。
「櫂もこっちを慣らして、俺だけの女の子にしちゃおうかな、いい?」
「……!」
いいわけない。
そんなの、嫌だ。絶対嫌だ。
フルフルと必死に首を横に降って返す。
すると誉は、"だよねえ"なんて呑気に答える。
そして、
「じゃあ、こっちもしてあげる」
と言うと、今度はペニスを本格的に愛撫し始めた。
しかも誉に後ろから抱かれ、後孔に熱く硬いペニスをすり付けられながら、だ。
「ちょ、誉、なか、まだ挿れちゃ……や、あ!」
そして、次の瞬間一気に穿たれる。
いきなり前立腺のところを突かれ、もう一方でカチカチになったペニスを擦られた。
「はあ、きつい……けどいつもよりうねうねしてて、気持ちいいよ、櫂」
「んなっ、てめ、さっきから人の体を好き勝手に……」
「あー、だめだ、もう気持ちよすぎて止まんない」
「あっ、ちょ、やめ、激し……!」
さっきの動画同様、下から思い切り突き上げられながら亀頭と竿の境目を中心に刺激を加えられて、俺はもうたまらない。
やばい、出る。
すぐにそう思った。
けど、なんだかいつもと違う。
いつもはもっと、熱が濁流のように競り上がってくるのに、今日のはもっとこう、何だろう。
そうだ、尿意に近い。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って、誉」
異変に慌て、俺は上体を起こし、誉に抗議した。
けれどそんなので許してくれる誉ではない。
「大丈夫、大丈夫」
そう優しく繰り返し、一方で加減をしてくれることはなかった。
「あ、あ……あ!」
まず最初に、さっきと同じ"ドライ"な絶頂が来る。
「やだ、ほまれ、ほんとやだ、出る、出ちゃう」
「うん、いいよ。いっぱい出してごらん」
「ちがう、ちがうの、でる、やだ、やだ!」
「違わないよ、大丈夫」
「うう、やだ、ふえ……」
恥も外聞もなく泣きながら暴れたが、強烈な尿意は治まらない。
「ほまれ、ほまれえ!」
そしてとうとう俺は情けない声で誉を呼びながら、自分でも信じられない量の尿を飛沫を上げ漏らしてしまった。
それと同時に、誉もまた俺の中に吐精をする。
後ろを突かれるたびに、まるでポンプみたいに前から飛沫をあげるのを暫く繰り返した。
俺は、あまりのショックに口がきけない。
まさか漏らすなんて、そんなのあり得ない。
快感と、混乱と、羞恥と。
色んな感情が入り乱れた結果、それが涙となって溢れてくる。
どうしたらいいのかわからず、めそめそと泣き始めた俺の背を撫でながら、
「初めてなのに上手に吹けたじゃない、いい子だね」
と優しく声をかけてきた。
「きっと勘違いをしてると思うから先に言うけど、君が漏らしたのは尿じゃないからね。
アンモニア臭がしないでしょ?」
「……え?」
……確かに言われてみればそうだ。
そうだけど、でも明らかに精子ではないし、じゃあアレは一体何だ。
「潮吹きって言うんだよ。
とっても可愛かったよ」
「……」
誉は満足げに俺の頭をよしよしと撫でてきた。
や、今欲しいのはそういうのじゃねえし。
やっと余裕が出て、悪態をついてやろうと思った矢先に、誉が自身を俺から引き抜く。
同時に湯船に固まった精液が漂うのを見てしまい、その生々しさに顔を手で覆った。
「ちなみに、こんなのもあるんだけど」
立ち上がりながら、誉が後ろから出してきたものを見て俺は呆れてしまった。
だって、生々しいペニスの形をした"オモチャ"がその手に握られていたからだ。
「絶対ヤダ」
「なんで?こっちも気持ちいいよ」
「ヤダったらヤダ」
「何で?」
「何でって……」
さっき、ローターでイかされた。
正直に言えば気持ち良かった。
気持ち良かったけど、でも。やっぱり。
「誉のやつのほうが、きもちいい、から、やだ」
ーー思わずそう口走って、直ぐに後悔した。
誉がメチャクチャ嬉しそうな顔をしていたからだ。
「そっか」
一気にテンションが上がったっぽい誉が、俺を抱き寄せて言う。
「そしたら、ベッドで第2ラウンド、しよっか」
「へっ……?!」
「そんな可愛いことを言われたら、俄然やる気が出た。
ドライでもウェットでも、また死ぬほどイかせてあげるね」
「いやいやいや、そうは言ってな……」
「櫂、大好きだよ」
ダメだ、もう誰も誉を止められない。
誉は俺をきとも容易く姫抱きをしてベッドへと一直線だ。
ーーー今夜、俺は死ぬかもしれない。
クリスマスの夜は、まだまだ長く続きそうだ。
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