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第4話

「帝人は、春馬の事をどう思っているの」  スティーブの問いに、愛していると答えるのは、違うと帝人は思った。愛しているからこそ、何年も一緒の時を過ごせたのだ。  帝人に取ってプライベートを他人と過ごすのは苦行に等しかった。家族はいたが放任主義の両親と、年の離れた兄弟であったから、同じ家に住んでいても顔を会わすことはなく、何かの行事で皆が集まってもよそよそしい雰囲気しかなかった。  そんな家庭環境の中で帝人は一人でいる自由と孤独、行動力と判断力を養っていった。だからこそ彼がその力を発揮する頃には、群れることを嫌い独断専行、相手の喉元に噛みつく狼として恐れられるようになっていた。 「春馬には誰よりも幸せになってほしい」  スティーブの問いに、ありきたりな、でも帝人にとっては真摯な答えを返した。 「ふぅん、それは自分と一緒じゃなくて、別の誰かとでもいいの?」  スティーブの問い掛けに、どくりと、帝人の心臓が縮み上がった。自分以外の誰かと、春馬が楽しそうに微笑みあっている様を想像する。考えた事もないし、考える必要があるのだろうか?  困惑する帝人に柔らかな笑みを浮かべスティーブは続ける。 「アランは死後の全てを彼の子供に委ねていたよ」  帝人は、何かにガツンと殴られた気分だった。  数十年の蜜月を過ごし、その生の終わる数年間を見届けたスティーブではなく、養育費を支払うべき存在としてしか関わらなかった我が子に、全てを託したというのか。  帝人の憤りも解っているであろうスティーブは、更に問いかけるのであった。 「君が身動き出来ない状況になったとして、君は春馬の幸せを願える?」  それから帝人は考え、時にスティーブに言い返し答えを求め、夜を明かした。 そしてマンハッタンの高層ビルに差し込んだ光に決断したのは、春馬との別れであった。

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