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第4話(フレイン視点)

 ――やれやれ……面倒なことだね。  本来、戦闘で死んだ者を運び込むのは下位ランカーの仕事だが、そんなことにこだわるのもアホくさいとフレインは思っている。  運びたい時は運ぶ。そうでない時は任せる。今日はたまたま弟が相手だったから、自分で運んでやりたくなった……それだけだ。  硬直が始まりかけている弟を、急いで棺の中に寝かせる。死ぬ直前まで激しく動き回っていたため、筋肉が硬まるのがやや早かった。 「…………」  フレインはじっと弟の顔を見つめた。やや長めの前髪が目元にこぼれかかっている。そっと左右に掻き分けてやったら、端整な顔が露わになった。血で汚れていても、我が弟は美形である。  ――本当に強くなったものだ……。  アクセルがヴァルハラにやってきたのは、三ヶ月ほど前。最初はランキング圏外の新人戦士だったのに、三ヶ月で一気に100位以内に食い込んできたのだ。  最高神・オーディンの眷属として選ばれた戦士(エインヘリヤル)は、もともと粒揃いの猛者ばかりである。その中で上位100名に入るのは並大抵のことではなかった。ましてやたった三ヶ月で頭角を表してきたということは、余程の努力をしたという証拠だ。  ただ兄に振り向いてもらいたいがために……。 「……アクセル」  弟の唇にそっとキスを落とす。濃厚な血の味がした。思った以上に甘美で、反射的に背筋がぞくりとした。 「おやすみ。またいつか死合(しあ)おうね」  そう囁き、棺を閉めて、フレインは館を後にした。  今日の「死合い」はもうおしまい。後は夕方から行われる酒宴に参加するかどうかだ。  ――たまには参加しようかな。  いつもはあまり気が進まないが、今日はすこぶる気分がいい。ヤギの蜜酒をたらふく飲んで酩酊したいところだ。  そんなことを考えながら歩いていると、友人のジークに遭遇した。背が高く体格にも優れ、戦士ランキングも五位の強者だ。

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