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第5話(フレイン視点)
「やあジーク。今から宴かい?」
「ようフレイン、お前も宴……って、うっわ! ひっどい有様だな。その格好で参加するのかよ?」
「ありゃ、そうだった」
自分の姿を見下ろしたら、白い上着にべっとりと血糊が付着していた。アクセルの血がついていたのを忘れていた。
そう言えば、肩の傷も治していない。宴の前に治療して着替えてこなくては。
ジークが片眉を上げてこちらを眺める。
「ていうか、お前がそこまで汚されるなんて珍しいじゃん。誰にやられたんだ?」
「アクセルだよ。三ヶ月前に入ってきた新人の」
「え、マジで? すげぇ! そいつ、何位だっけ?」
「ええと……何位だったかな。細かい数字は忘れちゃった。でも最近100位以内に入ってたような気がするよ」
「へえ、そうなのか。なかなかのスピード出世だな」
「まあね。ぼんやりしていると追い抜かれそうだ」
「ランキング三位の美麗戦士サマでも、そう思うことがあるのかよ?」
「そりゃあね。三ヶ月で『狂戦士 』になれる人はそう多くないからさ」
「え? 狂戦士にまでなったのか?」
「なっていたよ。無意識だったけど」
エインヘリヤルは、ある一定の強さに達すると狂戦士モードに入ることがある。身体が軽くなり、痛みに怯まなくなり、視界がクリアになって、戦闘力が飛躍的に向上するのだ。
この「狂戦士モード」は本来かなりの練度が必要であり、三ヶ月程度では到底身に付くものではない。そういう意味では、アクセルはかなりの才能を持っていると認められる。
もっとも、本人は「狂戦士モードに入った」ことを自覚している様子はなかったが。
ジークが苦笑した。
「自覚できないうちは、狂戦士なんてなるもんじゃないぜ。下手したら魂壊されて蘇生できなくなっちまう」
「うん。だからそうなる前に殺しておいた。オーディン様の戦士を無駄に減らすわけにはいかないからね」
それに……と、フレインは思う。
せっかくあの子がヴァルハラに招かれたのだ。生前の功績が認められ、オーディン様の戦士としてここで暮らすことを許されたのだ。
ならば存分に楽しまなければ。血と愛にまみれた狂闘を、永遠に。
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