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第6話(フレイン視点)

「それじゃ、私は怪我を治して着替えてくるよ」 「おう。じゃ、また宴でな」  ジークと別れた後、フレインは「オーディンの泉」に向かった。  広々とした滝壺に、岩場から透明な水が流れ落ちている。死ぬほどの怪我ではない場合、ここで水浴びして傷を癒すのだ。さしずめ「(みそ)ぎ」のようなものだろうか。 「ちょ、おい……。あれフレイン様じゃね?」 「え、マジかよ。オレたち出た方がいいかな」 「そ、そうかもな……」  ひそひそ話し合っている先客もいたが、フレインはかまわず上着を脱いだ。  次いで上半身裸になったら、アクセルにつけられた傷跡が露わになった。左の肩胛骨から背中の中心にかけて、バッサリ斬られてしまっている。  ――ありゃ……意外と酷かったなぁ。  痛みはそれなりだったが、ここまで傷が深いとは思っていなかった。アクセルもなかなかやるではないか。  小さく微笑みながら、下着一枚になって泉に飛び込んだ。  透明度の高い泉は、水中で目を開ければどこまでも見通せるほど透き通っている。水温もちょうどよく、全身の疲れが溶けていくようだった。  フレインは背中を水に浸し、仰向けになって静かに遊泳した。横目で、先客の男たちが顔を赤くしながらそそくさと出て行くのが見えた。  そう言えば、ヴァルハラに来たばかりの頃は色目を使ってくる戦士たちがたくさんいたものだ。今はそんなことをしてくる命知らずなヤツはいないが、男しかいないヴァルハラの中では、自分はちょっとした目の保養になっているようだった。  まあ、見たい人はいくらでも見ればいい。別に減るものじゃないし、不快にもならない。  仮に無礼なことをしてくる者がいたら、問答無用で腕を切り落としてしまえばいいだけのことだ。 「…………」  フレインはぼんやりと空を見上げた。  今こうしている間にも、アクセルの蘇生は続いている。結構な重傷だったから、目覚めるのは明日の朝になるかもしれない。  一体どんな夢を見ているのだろう。せめていい夢を見ているといいな、と思った。  次に目覚めたら、またしばらく会うこともできないだろうから。  ――待ってるよ、アクセル。  私に追いついてくれるのを。いつまでも。ずっと。

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