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第7話

 生前の夢を見た。それは六歳くらいの時の記憶だった。  当時は国同士の(いさか)いが激しく、国境付近ではしょっちゅういざこざが起きていた。  特にアクセルが生まれ育った町はその国境に近く、男は幼少期から戦う訓練を受けるのが当たり前となっていた。 「やっ! はっ! ふっ!」  握った剣を、的に向かって何度も振り下ろす。敵を模したカカシのような的だったが、訓練に使い続けているためもうボロボロだ。 「たあぁぁっ!」  腕に勢いよく剣を叩きつけたら、バキッという音がして腕が折れてしまった。余った木材で作ったものだから、三日も訓練すればすぐに壊れてしまう。 「おや、もう壊してしまったのかい?」 「えっ……?」  おっとりした声が聞こえてきて、アクセルはそちらを振り返った。  すらりとした美男子が、微笑みながらこちらを眺めていた。柔らかな金髪が風に揺れ、白い衣装が太陽の下で輝いている。 「兄上!」  嬉しくなって、アクセルは兄に駆け寄った。  が、早く近づきたくて全力で走っていたら、地面に転がっていた大きめの石に足をとられてしまった。 「おわっ!」  案の定、頭から地面に突っ込み、転倒してしまう。正直かなり痛かった。 「ああ、大丈夫かい? 気をつけないとダメだよ」  すっ飛んできたフレインが助け起こしてくれる。 「……おや、泣いてるの?」  転んだ痛みで涙が滲んでいたようで、アクセルは慌てて袖で目を拭った。 「な、泣いてないっ! 兄上の気のせいだ!」 「ふふ、そうか。お前は強い子だね」 「いや、まだ兄上の方がずっと強い」  と、剣を握り直して素振りを始める。 「俺も早く兄上みたいになりたいんだ。それで、戦場で一緒に戦いたいんだ」 「なるほどね。だから一生懸命訓練してるわけか」  えらいえらい、と頭を撫でてくれるフレイン。  生まれた年が十一年も違うので、この頃はかなり成長に差があった。六歳と十七歳だからそれも当然だが、当時のアクセルは早く兄に追いつきたくて仕方がなかったのだ。

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