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第8話
「ところであのカカシ、もうボロボロだね。新しいのを作ろうか」
「あ、ならその前に試し斬りを見せてくれないか?」
「試し斬り?」
「兄上のその武器、ものすごく切れ味がいいんだろう? 一度見てみたいと思ったんだ。どうせ捨てるなら、あのカカシで試し斬りをしてくれないか?」
「ああ、そういうことか。うん、いいよ。よく見てて」
フレインがカカシの近くで足を止めた。脇に下げている武器の柄を握り、静かに構えの姿勢をとる。まだ武器は鞘に収まったままだ。
――まだ剣、抜かないのかな?
剣を抜かないと斬ることはできないのだが……と思った次の瞬間。
「あっ……!」
突然カカシの首が刎ね飛ばされた。次いで胴体、両脚、と綺麗に三つに切断される。太刀筋にブレがなく、木材で出来たカカシの切り口がどれもスッパリ整っていた。
「あああ……すごい、かっこいい……!」
「東の国で流行ってる『太刀』という武器だよ。緩いカーブを描いていて、片方の刃だけで敵を斬るんだ。両刃の剣じゃないから扱いは難しいけど、丈夫だし切れ味は抜群。そこが気に入ってるかな」
「はあぁ……」
目にも止まらない抜刀術に、アクセルはただ感動するしかなかった。
――兄上、すごい……ホントにすごい……!
上手い表現が見つからないが、とにかくすごいと思った。
強くてかっこいい兄。美しくて華がある兄。綺麗で優しくておっとりしているのに、戦場では勇敢に戦う――そんな兄に心底憧れた。
「兄上、俺もその武器使いたい! 今日から俺もその武器で訓練する!」
「え? これで?」
「そうだ! 兄上、貸してくれ!」
「えーっと……」
フレインはやや困惑したように苦笑し、太刀を鞘に納めてこちらに差し出してきた。
「じゃあ、ちょっと持ってみる?」
「うん!」
嬉々として武器を受け取ったのだが、兄が手を離した瞬間、両腕にズシリとした重さがのしかかってきた。
「うわ……っ」
思わず落としそうになり、慌てて太刀を抱き締める。
軽々扱っているように見えたのに、兄の愛刀は想像よりずっと重かった。今のアクセルが素振りしても、数回で腕が限界を迎えてしまうだろう。
――こんなに重かったのか……。
その重さを感じて、最初に思ったのは「やっぱり兄上はすごい」……ではなかった。
自分とはまるで違う次元にいる人。そこに到達できない悔しさや、焦りの方が強かった。
こんな調子じゃ、いつまで経っても兄上に追いつけない……。
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