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第9話
「もういいかな?」
と、やんわりと武器を取り上げられる。
無言で俯いている弟に気付いたのか、フレインは優しく頭を撫でてくれた。
「そんなに落ち込まないで。焦らなくても、お前ならいずれもっと強くなれるさ。私と違って訓練もサボらないし、何より真面目だからね」
「でも……」
「さ、今日はもう帰ろう。転んだところも治さないと、痕が残ってしまう」
軽々と抱き上げられ、兄に背負われてしまう。膝を擦りむいただけなので普通に歩けたのだが、「降ろしてくれ」と言っても兄は耳を貸してくれなかった。
「…………」
仕方なく、兄の首に腕を回してしがみつく。六歳の子供にとって、十七歳の背中はやたらと大きく感じた。
この背に追いつけるのが何年後なのか、アクセルにはわからない。
でもいつか追いつくことができたら、その時は……。
「……兄上、大好き」
「ありがとう。私も愛してるよ」
今思えば、これが兄に対する恋慕の始まりだった――。
◆◆◆
次の夢は、思春期真っ只中の少年期。兄への気持ちを自覚し始めた頃の話だ。確か十五歳くらいだったと思う。
もともと真面目なアクセルは、この歳になっても浮いた話はほとんどなく、「硬派な青少年」として町では有名だった。事実女性にはあまり興味がなく、「綺麗な女性と遊びに行くより訓練していた方が楽しい」と思っていた。
とはいえ、全くモテなかったわけではない。同年代の女の子から告白されたこともあったし、数人の女性集団に訓練場まで追いかけられたこともあった。
――煩わしいな……。
アクセルの家系は美人が多く、アクセルもすこぶる付きの美形になれた。それ自体は悪いことではないのだが、女性に興味のない人間にとっては周囲の歓声は煩わしいだけだった。
自分は集中して訓練に臨みたいのに、余計な雑音は邪魔にしかならない。
「アクセル、最近どうしたの? 隊長から小言を言われたんだけど」
帰宅した途端、兄にそう話しかけられてアクセルはドキッとした。
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