18 / 2200
第18話
腹立ち紛れに、アクセルは天に向かって叫んだ。
「兄上の馬鹿ー! 大雑把のニワトリ男めー!」
「? なんでニワトリなんだよ?」
「ニワトリは三歩歩くとすぐ忘れちゃうだろ。今度会ったら頭にトサカ投げつけてやる!」
「まあ落ち着けって。ほらアレだ、ここに来た時ヴァルキリーが言ってたじゃん。『エインヘリヤルになる時に、生前の記憶が一部欠損することがあります』って。フレイン様の物忘れはそれが原因じゃねーの?」
「だとしても! 弟のことは忘れちゃいけないだろ! 忘れるならもっと別のことを忘れてくれ!」
「そんなこと言われてもねぇ……」
「ホントにあり得ない……! 十一年ぶりの再会だったのに、第一声が『誰だっけ?』なんて……! 『ランク上げ、頑張って』じゃなくてもっと他に言う事あるだろ……!」
「まあまあ、本人が忘れちゃってるならどーしようもないじゃん? それよか、ランク上げて認知してもらった方が手っ取り早いと思うぜ?」
「わかってるよ!」
だから三ヶ月で100位以内までランクを上げたのだ。かなり無茶な修行をしたが、それくらいやらなければ兄に振り向いてもらえない。
忘れられたままでいてたまるか! 絶対に俺のこと思い出させてやる!
「そんなことより、アクセル今日非番だったよな?」
怒りに燃えていると、チェイニーが腕を引っ張ってきた。
「それならちょっと買い出し行こうぜ! オレ、久々にイノシシのシチュー食いたいんだよねー。宴で一度だけ出たあの味が忘れられなくてさ」
「それは作れってことか?」
「そうそう! アクセル、料理美味いし。シチューくらい作れるだろ?」
「『シチューくらい』って言うなら自分で作ったらどうだ?」
「まあ硬いこと言わずにさ。レッツゴー!」
「いや、買い出しは鍛錬終わってからに……」
半ば強引に市場に連行していくチェイニー。
やれやれ……と思いつつ、アクセルは買い出しに付き合うことにした。今日は何の鍛錬をしようか……と、頭の隅で考えながら。
ともだちにシェアしよう!