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第19話
それから一ヶ月ほど経ったある日の朝。アクセルは、ヴァルハラの中心にある世界樹・ユグドラシルの元を訪れた。
ユグドラシルは天上・地上・地下の三つの世界を貫いていて、最高神・オーディンはそこから全世界を見渡しているそうだ。
そのオーディンは隻眼の男性であり、いつもつばの広い帽子を被っていると言われている。そしてフギン(思考)とムニン(記憶)と呼ばれる二羽のカラスを飼い、必ず相手に突き刺さる魔法の槍グングニル、神秘の腕輪ドラウプニル、八本脚の神馬スレイプニル等を所有していて、普段は神々の世界にある「ヴァラスキャルブの館」で生活している……云々と聞いていた。
……が、実際にどうなっているかは不明である。何しろアクセルは、この目でオーディンを見たことがなかった。年に一度、何かの儀式でヴァルハラを訪れることがあるらしいが、その儀式が何かもよくわかっていない。というか、今はそういうことにあまり興味が湧かなかった。
アクセルの興味はただひとつ。一ヶ月でどれくらいランキングが変動したかだ。
――もう張り出されているな。
一ヶ月毎に張り出されるランキング表。アクセルはそれをチェックしに来たのだ。
ユグドラシル前の掲示板には大事な連絡事項が全て張り出されており、一週間の見回り当番や死合いの組み合わせ、死体回収係や救護当番なんてのも決められている。誰がどうやって決めているのか知らないが、完全にランダムなのでこの目で確認するまでどうなっているかわからないのだ。
「……!」
ランキング表を見上げたら、まず初めに飛び込んできたのは兄・フレインの名前だった。一位から順に名前が列挙されているので、三位の兄はすぐに見つけられる。
――というか兄上、相変わらず順位キープしてるな……。
兄の方が転落することは考えづらいから、やはり自分が強くなるしかないようだ。もっとも、兄がいきなり10位以下に落ちたりするのも嫌だけど。
次に自分の順位を確認する。前回は100位以内に入っていたが、今回はどうだろうか。鍛錬は続けているから、少しは上がっていて欲しいのだが。
「……!?」
思わず二度見してしまった。目をしばたたき、深呼吸してもう一度確認する。
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