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第22話
「わからないな。なんでそんなことをしてまで追い抜かないようにしてるんだ? 兄上だったら面倒臭がりそうなんだけどな……」
「だからさっきも言ったじゃん。追い抜かす方が面倒なんだよ。ミュー様を見てみりゃわかるっしょ。めっちゃ目の敵にされてんの」
「目の敵って……」
ミューはランキング一位の戦士である。アクセルはまだ会ったことがないが、ヴァルハラでも最強と名高い戦士だそうだ。
どうやらランゴバルトはそれが気に食わないらしい。「俺が最強」と思っているなら、理由はわからんでもないが。
――と言っても、その辺の事情はよく知らないんだけどな……。
ちょっと反省した。
これからずっとヴァルハラで暮らしていくのなら、兄以外の情報も少しは仕入れておくべきかもしれない。今までは全く興味がなかったが、上位ランカーに目をつけられてこれ以上ランクが上げられなくなるのは御免だ。
「……というかチェイニー、お前よくそんなこと知ってるな」
「そりゃあ毎晩宴に参加してるからねー。あそこは噂話の宝庫だよ。嘘か本当かわからない情報も多いけど、意外と大事な情報もオープンになってるし」
「そうか……」
「あ、そう言えばこの間、宴にフレイン様来てたよ。あの人、滅多に宴には顔出さないけど、珍しく来てたからみんなめっちゃテンション上がってたー」
「えっ!? それホントか!? なんで誘ってくれなかったんだよ!」
「だってアクセル、宴には興味ないっしょ。それよか鍛錬してた方がいいって言ってなかった?」
「兄上がいるなら話は別だよ! そこは気を利かせてくれ!」
考えれば考えるほど悔しい。宴に行けば兄に会って話ができたのに、みすみすその機会を逃してしまうとは!
「はいはい……。じゃあ今度見かけたら声かけるよ。滅多にないだろうけど」
ひらひらと手を振るチェイニー。
小さく息を吐き、アクセルはもう一度掲示板を見上げた。何か他に連絡事項がないか、確認しておきたかったのだ。
――狩り以外の当番は、特になしか……。
ランキングが上がってくると死体回収や見回り等の雑用が減ると聞いていたが、確かにその通りらしい。死合いも一週間に三回入っているだけで、非番の日が三日もあった。
まあ非番の方が都合がいい。一日中鍛錬をしていられる。五〇位以内まで来たら、兄に手が届くまでもう少しだ。
そう思い、アクセルはユグドラシルから離れ、訓練場に向かった。
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