23 / 2231

第23話

 数日後、アクセルは初めての狩りに赴くため、指定された集合場所で待機していた。 「…………」  さほどの緊張は感じない。相手はイノシシやヤギだし、上位ランカーが五人もいればどうにでもなると思う。  もちろん油断は禁物だが、隊長・ランゴバルトの指示に従って目的の獣を狩って帰れば、それでミッションは終了だ。  ――それにしても、ランゴバルト様はまだ来ないのか……?  もう集合時間になる。他のメンバーは全員揃っているのに、彼は一体何をやっているのだろう。 「あんた、狩りは初めてだよな?」  と、メンバーの一人が声をかけてきた。ダンディーな口髭を生やした戦士――確か名前は、ショーンだ。ランキングは三十四位。 「わからないことがあったらオレに聞きな。間違ってもランゴバルト様に聞こうとすんなよ? あの人は何も教えてくれねぇから」 「え……そうなんですか?」 「ああ。あと、狩りの最中もあまり出過ぎるな。ランゴバルト様の前に出たら、背中から真っ二つにされちまう」 「真っ二つって……」 「安心しな。前に出なきゃいいだけの話だ。とにかく、戸惑うことも多いだろうが上手くやれよ?」 「は、はあ……」  出発前にすごいことを聞かされてしまった。違う意味でちょっと不安になってきた。一番気をつけなければいけない相手は、獣ではなくランゴバルトかもしれない。 「……お。噂をすれば隊長のお出ましだ」  他の三人が膝を折ったので、アクセルも一緒に跪いた。ずしん、ずしんという重い足音が近づいて来て、跪いている前で止まる。  何を言われるのかと思っていたら、ランゴバルトは「ふん」と大きく鼻を鳴らした。 「なんだ、今日のメンツは雑魚ばかりだな。一〇位以内のヤツはいないのか」 「……!」  開口一番、いきなり雑魚呼ばわりされてしまった。腹は立たなかったが、さすがにちょっとびっくりした。 「まあいい。ついて来たいヤツは勝手にしろ。俺は一人で行くぞ」 「……!?」  はあ? と思い、アクセルはランゴバルトを見上げた。一人で行くとか、どれだけ自信があるんだ……と呆れたが、彼を見たら一瞬にしてその理由が理解できた。

ともだちにシェアしよう!