24 / 2200
第24話
まず目に付いたのは、兜についている巨大な羽根飾り。真っ赤に染められた羽根が動く度に揺れ、相手を威圧するのに一役買っている。
全身は黒々とした甲冑で覆われており、二メートル以上もありそうな身体をがっちり守っていた。
眼光も鋭く、愛想笑いも皆無で、雰囲気だけで人を殺せそうだ。
これがランキング二位の戦士・ランゴバルトの風貌だった。
――これは……確かに「如何にも」という感じだな……。
強そうだった。いや、実際強いのだろう。チェイニーから聞いたが「俺が最強」と豪語しているような人物である。自分の強さに絶対の自信を持っているに違いない。
それだけに、誰かに追い抜かされるのはプライドが許さないのだろう。「ランゴバルト様の前に行くな」というのは、そういうことなんだな……とアクセルは思った。
兄が面倒なポイント操作をしてまで三位に留まっている理由も、なんとなく理解できた。確かに、こんな大男に目をつけられるのはアクセルだって嫌だ。
「ふん」
再び鼻を鳴らし、ランゴバルトは歩いていってしまった。
あまり張り切らないように気をつけよう……と思いつつ、アクセルも彼の後に続いた。
◆◆◆
狩りの場というのは、ヴァルハラから少し離れた山奥だった。
今の時期はちょうど紅葉が綺麗に色づいており、狩りは狩りでも「紅葉狩り」もできそうだった。この雰囲気なら、春には普通に花見もできるかもしれない。
もっとも、ヴァルハラに四季があること自体、摩訶不思議な気もするが。
――いつか兄上と一緒に来てみたいな……。
とはいえ、今は狩りに集中しなければならない。はて、ランゴバルトは一体何を狩るつもりなのだろう。
黙って様子を窺っていると、ランゴバルトはやや開けた場所で足を止めた。そして背負っていた武器を右手に握り締めた。身の丈以上もある長戟だ。無骨で柄も太く、いかにも重そうに見える。
「最低一人一匹仕留めろ。種類は問わん。仕留められたら獲物を持ってここに戻ってこい」
それだけ言うと、ランゴバルトはさっさと山の奥に歩いていってしまった。
小隊を率いて巨大な獲物を狩る、というスタイルではないようだ。これでは小隊を組んでいる意味がない。
ともだちにシェアしよう!