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第25話

「じゃ、オレたちも適当に狩りをしてくるか。くれぐれも、ランゴバルト様より大きい獲物は狩ってくるなよ? 子供のイノシシやシカを狙えば安全だ」  と、ショーンがアドバイスしてくれる。なるほど、そういうところも気をつけないといけないのか。  大人はできるだけ避けること……と心の中にメモし、アクセルも茂みの中に入っていった。周囲の気配を確認しつつ、自分の武器に目を落とす。  ――これも昔、兄上に勧められたんだよな……。  最初は兄の真似をして「太刀」を使っていた。でもアクセルにはあの重さと長さがどうにも扱いづらくて、手合わせの成績もあまり伸びなかったのだ。  どうしたものかと悩んでいた時、兄・フレインにこう言われたのだ。 「もっと剣を短くしてみたらどう?」 「……短く? 短剣にしろって言うのか?」 「いや、そこまで短くしなくていいけど。でもアクセルの長所は腕力じゃなくて瞬発力だからね。もっと小回りが利いて軽い武器の方がいいんじゃないかと」 「軽い武器か……」  それで考えあぐねた結果、二振りの小太刀を使うことにしたのだ。  本当は両刃の方がよかったのかもしれないが、片刃であることは譲りたくなかった。そこだけは兄との共通点として残しておきたかったのだ。  だがそのおかげで成績も伸び、生来の真面目な性格も相まって、アクセルは十六歳で初陣を飾ることができたわけだ。  ――もっとも、生きてる時には兄上との手合わせは叶わなかったが……。  アクセルが戦場に立てるようになった時には、兄は既に前線でバリバリ活躍していた。お互いの出陣場所が違うので会うことも滅多になく、早く前線に出たいと思っていたら兄が戦死してしまったのだ。  あれから十一年以上も経っているが、今でも血(まみ)れの兄を見た衝撃は忘れられない。ある意味、軽いトラウマだった。

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