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第26話
――それにしても、兄上を殺した敵って誰だったんだろう……。
贔屓 目抜きにしても、兄・フレインは鬼のように強い。そんな人を正面から斬りつけた挙げ句、右脚まで切断してしまったのだから、余程の手練れだったに違いない。
ランゴバルトなら如何にもありそうだと思ったが、チェイニー曰く、
「ランゴバルト様は100年近いベテラン戦士だから、武器や装備にも歴史を感じるよね」
……ということだったので、時代的にあり得ない。
それほどの手練れなら、まだ下界で現役戦士として活躍してるかもな……と思いつつ、アクセルは森に目を向けた。
それにしてもおかしい。先程から何の気配も感じない。
もっと獣がバンバン出てくるような危険な場所かと思っていたのに、全然想像と違う。これならわざわざ「ランキング五〇位以上の戦士」という条件を設けなくても、誰でも狩りに行けるのではないか。
「……!」
その時、微かに――本当に微かにだが、背後の茂みから物音が聞こえた。
アクセルは素早く抜刀しながら背後を振り返った。一体何が出てくるか身構えていると、地面と茂みの隙間から、一匹の白い動物がひょっこり顔を出してきた。
――……うさぎ?
しかもかなり小さい。アクセルの手のひらにすっぽり収まってしまうサイズだ。間違いなく子供である。というか赤ちゃんかもしれない。
「…………」
どうしようか迷ったが、結局アクセルは武器を鞘に納めた。ここまで小さな獣である必要はない。もっと別のヤツを探そう。
そう思って立ち去ろうとした時、子うさぎの様子がおかしいことに気付いた。何かを求めるようにじっ……とこちらを見ている。
「……? お前、どうしたんだ?」
アクセルが近づいても逃げない。それどころか茂みから出てくる。
子供だから警戒心がないのかと思っていたら、左脚から何か棘のようなものが飛び出しているのが見えた。よく見たら、それは短めの小枝だった。
「怪我してるのか」
アクセルは子うさぎを拾い上げ、小枝を摘んで引き抜いてやった。そして持っていたハンカチを適当な長さに割き、左脚に結びつけてやった。
「……これでよし。ほら、誰かに狩られる前に早く逃げな」
と、地面に子うさぎを下ろしてその場を立ち去る。
――こんな調子じゃ、子供は狩れないかもしれないな。
小さめの大人を狙うしかないか……と、アクセルはこっそりと苦笑した。
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