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第29話(フレイン~アクセル視点)

 アクセルに執着してないって? やってることがむちゃくちゃだって? アクセルが可哀想だって?  そう思いたいならそれで結構。残虐非道な兄だと罵りたいならそれでもいい。事実、100%的外れというわけでもない。自分でも、かなり冷たいことをしている自覚はある。  ――本当は、昔みたいにもっと甘やかしたいんだけどなぁ……。  フレインが生まれ育った町は、兄弟がたくさんいる家庭が多く(当時は他国との戦争が頻発していたため、より多くの子供を作っておいた方が有利だった)、同世代の子供の中で一人っ子なのはフレインだけだった。小さな弟や妹に囲まれている友達が羨ましかったし、直接母親にねだったりもした。  だから、アクセルが生まれてきた時は本当に嬉しかった。  自分の後ろを「あにうえ、まって」と追いかけてくる姿も、転んで泣きそうになっている姿も、毎日一生懸命鍛錬に取り組んでいる姿も、全てが愛おしかった。こんな可愛い生き物、この世にないと思った。本当に可愛くて可愛くて仕方がなかった。  でも、ある時ふと気づいたのだ。自分がアクセルに向けている愛情は、ペットに注いでいる愛情と同じなのではないか、と……。 『緊急召集。お手すきのランキング一位~七位の戦士は、至急ユグドラシルの前に集まってください』  その時、天からヴァルキリーの声が降ってきた。  ――ありゃ、召集とは珍しい。  何かあったんだろうか……と訝しみながら、フレインは世界樹・ユグドラシルに向かった。 ◆◆◆ 「……で? 結局一匹も仕留められなかったってわけか」  ショーンが呆れ顔で腕を組む。  あの子うさぎを助けた後一時間ほど探索してみたのだが、「これならいいだろう」という獲物がどうしても見つからなかったのだ。それで一度元の広場に戻ったのだが、未だに収穫なしなのはアクセルだけだった。 「どうするんだよ。ランゴバルト様に怒られるぞ。一人一匹ってノルマだったのに」 「すみません。戻ってきたら素直に謝ります」 「いいよ、オレのイノシシ一匹やるって。たまたま二匹狩れたからさ」  と、別の戦士が口を挟んでくる。

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